国をあげて農業再生へ支援を

◇企業の農地取得可能に
会社など一般の法人にも農地の取得を条件付きで認める改正法が、4月26日の参議院本会議で可決・成立しました。これまで、企業などが農地を取得することは、農地法で規制されてきました。政府は、特例として2016年から「国家戦略特区」に限り認めていましたが、今回の改正により、その範囲が全国の自治体に広がります。

◇背景には、農業の担い手不足が
 今回の制度改革の背景にあるのが、農業の担い手不足です。農林水産省によると、普段から農業に従事している「基幹的農業従事者」は2020年で136万人でした。この人数は、15年の175万人から22%減り、05年の224万人と比べると39%の減少となりました。

◇他方で、若者の農業就農人口は増加
 「基幹的農業従事者」は減少傾向にあるものの、若者の就農人口は増えています。農水省の調査によると、20年の20~49歳では、親から経営を継いだり、新たに参入したりしたことで、前回調査(15年)より2万2千人増加していることがわかります。その理由としては、働き方の多様化が進むなかで、自然に向き合う農業に魅力に感じる若者が多くなっていることや、政府・自治体による支援などが考えられます。

◇受け皿となる農業法人
 農業を選ぶ若者が増えている背景には、受け皿となる農業法人の増加も挙げられます。22年には、法人が主体となった農業経営は3万2000社を数え、17年の2万5000社から大幅に伸びました。近年、農業に参入する企業は、AIやドローンなど先端テクノロジーを積極的に活用し、生産性の向上を目指しています。

◇国をあげて農業再生へ支援を
 食料自給率の低さ、耕作放棄地の増加、農業従事者の高齢化など、日本の農業をめぐる課題は山積しています。近年では、食糧安全保障への関心も高まっています。私たちの暮らしを支える農業。政府はそうした懸案の解決を主導すべき責務があります。国をあげて新しい技術や画期的なアイデアを生かした新しい農業像を確立しなければなりません。

 

<編集後記>
今日は、日本の農業について取り上げました。農業に従事する若い人が増えていることは意外でした。この流れが続いてほしいですが、将来的な生産労働人口の減少は不可避です。イノベーションによる農業生産性の向上などを期待したいと思います。この問題については、今後も取材を続けていきます。

 

<参考文献>

・日本経済新聞『農業再生、企業が耕す 販売額比率4割に拡大』(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC024040S3A400C2000000/8)(閲覧日2023年5月2日)

・日本経済新聞『企業の農地取得、全国の自治体が申請可能に 国審査残す

自治体の買い戻しなど要件』 (https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA01DW90R00C23A3000000/)(閲覧日2023年5月2日)

・NHK『企業などの農地取得 自治体の申請に基づき認める改正法が成立』(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230426/k10014049851000.html) (閲覧日2023年5月2日)

・NHK『なぜいま人気?異業種からの農業参入』(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221202/k10013910181000.html) (閲覧日2023年5月2日)

・共同通信『企業の農地取得、申請可能に 参院で関連法成立』(https://nordot.app/1023917865822322688?c=39550187727945729) (閲覧日2023年5月2日)

・農林水産省『令和3年度 食料・農業・農村白書』2022年、26-30頁。

・農林水産省『令和4年農業構造動態調査結果(令和4年2月1日現在)』(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/noukou/r4/index.html) (閲覧日2023年5月2日)