キャラクターの権利が認められるのはどこまでか

 読者の皆様はうがい薬をよくお使いになるでしょうか。筆者は疲れるとすぐに口内炎ができてしまうため、しばしばうがい薬のお世話になっています。うがい薬というとうがいをするカバのキャラクターで有名な明治のイソジンのうがい薬があります。読者の皆さんもCMで一度は見たことがあるのではないでしょうか。実は、このイソジンのうがい薬のキャラクターを巡った訴訟がありました。
 
 イソジンのうがい薬は、明治がイソジンの開発元であるムンディファーマと契約して50年以上日本で独占的に製造、販売をしてきました。しかし、ライセンス契約終了に機にムンディは新たに塩野義製薬を通して販売することになりました。これを受けて、明治は新たなブランドとして「明治うがい薬」の販売を決め、明治が商標権を持つ「カバくん」をパッケージに使います。
 
 そして、問題になったのがムンディの新しいうがい薬のパッケージに使われたキャラクターです。ムンディがデザインした動物がうがいをしているイラストが「カバくん」に似ているため、商標権の侵害として明治が2月9日に使用差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てました。そして、3月18日に和解となり明治が「カバくん」を継続し、ムンディファーマがデザインを変更することに決まりました。
 
 この訴訟の結末はキャラクターが筆者の目から見ても非常に似ているため、納得がいきますが、一つ気になることがあります。それはキャラクターを独占的に利用できる権利はどこまで認められるのかということです。
 
 今回の場合は中身がそのままでブランド名を「明治うがい薬」に変えるだけということなので、明治が以前のまま「カバくん」を利用することに何の問題も無いでしょう。しかし、これが全く別の商品で中身ごと変えるとなると、問題が複雑になります。商標権を持っている製造会社か販売会社に当然権利があります。しかし、消費者にとってキャラクターのイメージがそれまでの商品に結びついているとすると、新しい別のブランドになっても同じイラストが使われることには違和感を覚えます。もともと商標権が認められるのはその企業が築き上げた功績に報いてそのブランドの信頼性を保障することが目的であることを考えると、商品が大きく変わるのであれば、そのブランドイメージを喚起するキャラクターも変更すべきでしょう。
 
 企業の側からすれば、ブランド改正までの生産、販売の実績から信頼性が証明できるため、自社が商標権を持つイラストを新たなブランドにも利用しても良いとも考えられますが、商品者の側からすれば、商品に対応したキャラクターが保障すべき信頼性は企業ではなく商品であり、同じイラストを利用するのであれば、同じ品質であることを期待するでしょう。
 
 この明治のうがい薬の現状とは異なりますが、独占権の付与と消費者の信用する部分のギャップを感じました。理想は消費者にとっての価値に見合った権利が企業に与えられることですが、今後それが実現に近づくような法律に変わっていくのか注目です。
 
 
 
参考記事:3月25日付朝日新聞朝刊(東京14版)9面(経済面)「カバのうがい薬両社が和解」
       3月25日付日本経済新聞朝刊(東京13版)11面(企業総合面)「明治が「カバくん」
       継続」
       2月10日付日本経済新聞(東京13版)15面(企業・消費面)「塩野義系が販売の新
       イソジン」