「性的同意」は野暮? ムードも大事にしたいなら

近年耳にする「同意」という言葉。3月に閣議決定された性犯罪をめぐる刑法の改正案では、性的な行為の前に相手の同意を確認する「性的同意」の有無がより注目される条文になっています。分かりやすいと話題になった、レイチェル・ブライアンさん制作の動画「お茶と同意」では、紅茶にたとえて、性と同意の在り方について述べています。

・あなたが誰かに紅茶を淹れても、相手が飲む義務はない。
・「紅茶はいかが?」とあなたが尋ねて「いただきます」と相手が答えたのに、いざあなたが紅茶を出すと「要らない」と言われることがある。その場合でも、相手に紅茶を飲む義務はない。
・相手が酔っていて意識がないときは紅茶を淹れない。意識のない人は紅茶を飲みたいと思わない。
・相手が「紅茶を飲みたい!」と言ったあとに意識がなくなったら、紅茶を飲ませてはいけない。意識不明の人は紅茶を欲しいとは思わない。
・「紅茶を飲みたい!」と言って飲みはじめ、飲み終わる前に意識がなくなったら、紅茶を飲ませてはいけない。
・「紅茶を飲みたい」と先週言っていたとしても、常に紅茶を飲みたいわけではない。
・紅茶と同じようにセックスも相手の同意と承認、納得が必要なのは当然のこと。

 

私もこの動画を見た時、確かにと頷いた一方で、「紅茶を飲ませる」ことと「性行為」は、「雰囲気の必要性」という点で大きく違うな、とも思いました。「いちいち確認を取るなんて野暮だから」とムードを優先して、同意の有無が不明なまま性交渉をすることがあってはならない、というのは分かります。けれど、雰囲気が崩れてしまうと興奮しづらくてうまくいかないとか、パートナーとより良い関係を築くことの支障になる、という意見も軽視したくないと思うのです。私の知り合いでも、男女問わず「楽しみたいのに楽しめない」「気持ちいいと思えない」という悩みを抱える人は少なくありません。集中できなくなってしまう要素をできるだけ省くという努力も、必要な場面はあると思います。

性的同意の必要性を説かれると、全ての段階で「言質をとって確認をしなければいけないのか」と構えてしまいがちですが、本当に大切なのは、いつも「相手は今は嫌かもしれない」と考えること、「私はあなたの気持ちも尊重したい」という気持ちが互いに伝わっていることではないでしょうか。

パートナーができた時、同意の大切さについて一度は話し合い、「いつでも断って良い」という双方の共通認識を持っておくことが非常に重要だと思います。「どちらかが嫌だったらしない」「たとえ同じベッドにいて、キスまでしたとしても、途中で気分が乗らなければ止めても良い」「断ったとしても、必ずしもあなたが嫌いになったというわけではない」「傷付けたいというわけではない」という認識の確認、すり合わせをしておくことで、同意もとりつつ、雰囲気も大事にできるのではないでしょうか。

「ホテルに行っても応じなくていい」「泊まる=性行為が伴う、というわけではない」という認識は社会にもっと定着すべきでしょう。以前、「宿泊代を払ったのに(自分に自信がなくて)何もできなかった時は、勿体なかったって後悔するよね」という男性の意見を聞いたことがありました。それ以来、筆者も「本当に何もしなくて良いのかな」「『何もしないからね』って、大抵何かする時の決まり文句じゃないのかな」「本当はすごくがっかりしてるんじゃないかな」と不安に駆られた経験があります。確かに宿泊代は決して安くはないけれど、そんなことよりも一人一人の人権が尊重されることの方がよほど大事だという考えが当たり前になってほしいと思います。

また、こういった話題の時、女性側の性的同意に注目が集まりがちですが、私は男性の意見も、もっと当たり前に尊重されるべきだと思います。確かに体格差などから、女性の方が恐怖感を覚えやすいのかもしれません。でも男性にだって、「今はしたくない」「この人とこの行為はしたくない」という気持ちはあります。性行為が苦手な人も、性欲が強くない人もいます。「据え膳食わぬは男の恥」なんて言葉や、必要以上のプレッシャーにとらわれ、気分が乗らないのに断れない可能性も、十分に配慮しなければならないでしょう。

野暮だからと性的同意を軽視せず、一方でセックスという一つのコミュニケーションは大事にしたい。パートナーと話し合い、少しずつ了解点を探っていくことで、より良い人間関係を築いていきたいものです。

 

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