政府は、金融知識の普及へ努力を

◇「貯蓄から投資へ」

昨年11月末、政府は、岸田文雄首相を議長とする「新しい資本主義実現会議」で、「資産所得倍増プラン」を決定しました。少額投資非課税制度(NISA)の拡充を盛り込み、投資を一層促進していく構えです。岸田首相は、就任後から経済政策の目玉として「新しい資本主義」を掲げ、中核に資産運用による収入の拡大を挙げてきました。

近年、岸田首相の「貯蓄から投資へ」という合言葉で資産運用への関心が高まっています。若年層でその傾向は顕著です。金融庁によると、2020年末の20歳から30歳のNISA口座数は310万だったのに対して、21年末には424万と大幅に増加しました。

内閣官房新しい資本主義実現本部事務局「所得に関する基礎資料集」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/bunkakai/sisanshotoku_dai1/siryou3.pdf)(閲覧日2023年4月12日)

◇増える「投資詐欺」

投資機運が高まる中で、投資詐欺も増加しています。22年10月から12月の期間で、金融庁の「金融サービス利用者相談室」に対して寄せられた相談のうち、詐欺的な投資勧誘に関するものが1,322件あり、そのうち1,048件が何らかの被害があったとしています。「元本保証」や「必ず儲かる」などと消費者に甘い言葉で出資を促し、お金を騙しとる手口が横行しています。

 

◇金融教育の充実が急務

投資詐欺に騙されないためには、正しい知識を身につけることが必要です。そのための金融教育の充実は、急務と言えるでしょう。政府は、金融教育を強化するため、学習指導要領を改訂し、22年度から高校での金融教育を「必修」としました。金融広報中央委員会の調査によると、「金融知識に自信のある人」の割合は、12%と低い水準にとどまっています。政府は、学校にとどまらず様々な機会を活かし、金融知識の普及に向け、より一層努力すべきではないでしょうか。

 

<参考資料>

日本経済新聞「資産所得倍増プランを決定 政府、NISA拡充盛る」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2832Z0Y2A121C2000000/)(閲覧日2023年4月12日)

 

日本経済新聞「貯蓄から投資、まずは金融教育 知識に自信1割止まり」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB301LT0Q2A031C2000000/)(閲覧日2023年4月12日)

 

金融庁「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等(期間:令和4年10月1日~同年12月31日) (https://www.fsa.go.jp/soudan/2022soudan10-12/2022_10-12.html

)(2023年4月12日)

 

金融広報中央委員会「金融リテラシー調査(2022年)」(https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2022/)(閲覧日2023年4月12日)