海賊版サイト撲滅へ 取り締まりと個々のモラル両方の重要性

先日、現地当局の強制捜査を受け、中国に拠点を置く日本アニメの海賊版サイト「B9GOOD」が閉鎖されました。2008年から運営されていたというこのサイト。日経新聞によると、ここ二年のアクセス数は3億件を超え、逮捕されたサイトの運営者は広告収入で一億円超を得ていたと言います。

海賊版サイトと聞くと、漫画を無料で閲覧可能にしていた「漫画村」の事件が思い出されます。その摘発前、当時高校生だった筆者自身も誘惑に負け、漫画村で漫画をついつい見てしまったことがありました。その後猛反省し、今は全く利用していませんが、海賊版に流れる人の気持ちもわからなくはありません。閲覧者が多くいることに加え、直接咎められることもないので罪の意識を抱きづらいうえ、掲載されている数多くの作品を無料で読むことができるのですから。

海賊版サイトの台頭を防ぐには、サイトを取り締まることに加え、公式サイトの利便性を向上させるアプローチも必要です。その好例が集英社の「ジャンプ+」と「MANGA Plus by SHUEISYA」でしょう。前者はアプリ連載されている作品を中心に、初回であれば「全話無料」で読むことができます。「待てば無料」を売りに、すぐに無料で読むことはできない漫画アプリが多い中、全話無料を打ち出すことで顧客維持に繋げています。そんな大胆な手法を取りつつもヒット作を生みだし続け、収益も拡大させているのは流石としか言いようがありません。後者は海外に向けたサイトで、週刊少年ジャンプの作品などの冒頭部分や最新の数話を無料公開しています。このような出版社側の努力もあって、出版不況と言われる今も、電子コミック市場は成長を続けています。

ただ、こういった出版社の努力や捜査当局による摘発だけでは防げない問題もあります。それが「早バレ」と呼ばれる、漫画の発売前にその筋書きが公開されてしまう問題です。雑誌に掲載される漫画の内容がその流通過程でリークされているらしく、SNSを中心に拡散されるので摘発も難しいようです。毎週月曜発売の週刊少年ジャンプを例にすると、その前の週の水曜から木曜の間にはその中身が誌面の画像付きで公開されてしまっています。

毎週ジャンプを買っている筆者としては、なぜちゃんと購入している自分よりも先に、タダ読みしているんだ、と怒りを覚えます。しかし、日本全国に雑誌を流通させる以上、途中段階でのリークを完全に防ぐのは難しいようです。やはり、読み手側の私たちもその違法性を意識し、手を出さないようにすることが求められています。

出版社は「STOP! 海賊版」を掲げ、業界一体となって対策に乗り出しています。最近では「ありがとう、君の漫画愛。」と題したキャンペーンを展開しています。これまでの啓蒙活動の多くは、違法であることを打ち出し、怒りや悲しみを訴えるアプローチが多かったのですが、正規版を読んでいる人に感謝を伝えるというコンセプトは新しく、思わず胸が熱くなりました。

海賊版サイトを撲滅させる為には、「サイト自体を取り締まり、閲覧できなくすること」と「違法アップロードを私達が見ないこと」の両方が必要不可欠で、後者は個々人のモラルに委ねられています。末永く日本の著作物を楽しむために、海賊版を見るのをやめ、正規版を利用している自分に誇りをもって楽しんでもらいたいと思います。

 

参考紙面:

中国海賊版サイト「B9GOOD」閉鎖、国境越え対処 運営者特定決め手 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

海賊版サイトとは 漫画やアニメを違法公開、広告で収益 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

参考資料:

AI×海外ファンでスピード翻訳 被害1兆円超…マンガ“海賊版”に奇策で挑む出版社(2022年7月29日) – YouTube

ありがとう、君の漫画愛。| STOP! 海賊版 (abj.or.jp)