「反フェミ」が蔓延る韓国 それよりもジェンダーギャップ指数ランキングが低い日本

12日付の朝日新聞に、韓国ドラマを研究してきた山下英愛・文教大学教授と翻訳家の小山内園子さんのインタビューが掲載されていました。韓国ではドラマ内での女性や性別観の描き方について議論し、差別的な表現をなくそうと努力していることを知りました。ドラマや映画など、メディア作品の内容や表現は社会に大きな影響を与えます。韓国ドラマが世界中で大ヒットしているのは、その影響力を良い方向に生かそうと言う姿勢にもあるのかもしれません。

何気なく見ていた韓国ドラマの中での女性の描かれ方について、改めて分析したこの記事はとても勉強になったのですが、一点だけ疑問を感じた部分がありました。以下、引用します。

山下「韓国ではとにかく、女性もみんな黙っていない。ドラマでも女性たちが悪態をついたり、髪の毛を引っ張ったりしてけんかするし、言いたいことを言う。侵略されたり戦争があったり、軍事政権下で民主化運動を戦うという歴史の中で話し言葉が作られてきたので、言葉がダイナミックなのかもしれない。そういう様子がドラマでも描かれているので、日本社会で生きてきた人が見ると新鮮で、すかっとするところがあるのかもしれないですね」

――そういう韓国社会の様子が、日本社会で息苦しく感じているような人には風穴のように感じられるのかもしれません。

「そういう韓国社会の様子」というのは文脈から察するに「そういう(ドラマで描かれる)韓国社会の様子」ということだと思うので、記事の内容に対し真っ向から反論しようというのではありません。しかし、実際に現地で暮らす中で、韓国で男女平等が実現しているとは全く感じられないため、違和感があったのです。

日本では女性が下に見られがちな現状はあるものの、「女性が嫌いだ」という人はなかなかいません。しかし、韓国では「女性嫌い」「反フェミニスト」が少なくありません。先日髪をバッサリ切り、アルバイト先に出勤したところ、韓国人の男性社員に「フェミニストだ」と言われました。意味が分からず、帰宅後調べてみたところ韓国の一部にある「女性嫌悪男性コミュニティー」※で数年前から「ショートカットの女性=男性を嫌悪するフェミニスト」という認識が広がっているということが分かりました。

男性だけに兵役という重い義務が課されている韓国では、常にフェミニストvs反フェミニスト、女性vs男性の対立が存在してきました。特に、2017年に就任したムン・ジェイン前大統領が「フェミニスト大統領になる」と宣言し、実質的な性平等社会の実現のため様々な政策を打ち出したことで、より男性の不満が溜まっていきました。

女性が優遇されているように見え、反フェミニスト男性の不満が爆発している韓国ですが、では実際に女性の方が社会で優位に立っているのかというとそうではありません。日本同様、企業の管理職や議員など、重要な意思決定の場における女性の比率は相当低いのです。女性は結婚と同時に仕事をやめるという慣習も根強く残っています。アメリカのCNNは昨年、韓国はOECD諸国の中で最も男女の賃金格差が大きいにも関わらず、男性の79%が逆差別に遭っていると感じているという事実を、驚きを持って伝えました。

貴重な20代の2年間を国のため兵役に費やすにも関わらず、女性の社会進出ばかりが取り沙汰される状況に不満を感じる男性の気持ちも理解できます。除隊後の公務員採用試験の際に優遇される軍服務加算制度も、女性差別であるという理由で1999年に廃止されました。しかし、兵役の負担解消は女性の社会進出とは別の問題として考えるべきだと思います。

元々儒教的な考えが根付き、家父長的制度が残っている上に、ジェンダー対立によって男女平等がなかなか実現されない韓国ですが、驚くことに世界経済フォーラムが毎年発表する「ジェンダーギャップ指数」ランキングでは99位と、116位の日本を上回ります。日本の方が、男女格差が大きいということです。

日本に兵役制度はありませんが、女性活躍やクオータ制などの議論になると韓国同様に男性逆差別であるという主張が登場します。その主張がすべて間違っているとは言いません。逆差別になりかねない取り組みについては慎重に議論していく必要があると思います。ただ、「逆差別された!」という反発が女性嫌悪・反フェミにつながり、ジェンダー対立があおられることだけは避けなければなりません。もともと立ち遅れている女性の社会進出がさらに阻まれる結果を招きかねないからです。

女性活躍の問題において、似たような社会構造と課題を持つ韓国から学べることは多いはずです。映像作品における女性の描き方がしっかりと議論されている部分は見習い、男女相互の嫌悪や罵り合いは反面教師として、日本のこれからの社会を考えていく必要があると思います。

 

※2021年7月31日付中央日報から引用。原文:여혐 남성 커뮤니티

韓国のインターネット上にはイルベ(日刊ベストスコア)、エペムコリアなどといった極右男性中心の反フェミニストコミュティーがいくつか存在します。

 

参考

2023年3月12日 朝日新聞「韓国ドラマは女性をどう描いてきたか 家父長的社会での生きるパワー」

2022年10月11日付 ハンギョレ新聞「フェミニストには罪はない…イルベ・ペムコの人気コメント46万件を分析〔嫌悪の素顔〕(페미니즘은 죄가 없다…일베·펨코 인기글 46만건 분석 [혐오의 민낯])」

2021年8月1日付 中央日報「ショートカットが男性嫌悪フェミニストだって?ググって必ず見ないといけないこの写真〔ニュースワンショット〕(숏컷이 남혐 페미라고요? 구글링해서 꼭 봐야할 이 사진 [뉴스원샷])」

2019年3月20日付 読売新聞OTEKOMACHI(大手小町)「日本と同じ?韓国女性が感じる『働きにくさ』」

2017年2月16日付 ハンギョレ新聞「ムン・ジェイン ‘フェミニスト大統領になる’(문재인 “페미니스트 대통령 되겠다”)」

CNN「Last Look: South Korea’s surprising anti-feminist movement