私たち、一人ひとりにできること

大阪梅田で起きた事故から1週間が経ちました。筆者も先日、現場へ行きました。多くの飲み物、花束が供えられています。通りがかる人たちも立ち止まって手を合わせ、犠牲者を悼んでいました。

2月25日午後0時30分過ぎに発生した暴走事故。車は時速30~40キロで交差点に突っ込み、歩道を約40メートル進んで花壇に激突。運転者の大橋篤さん(51)と通行人の男性が亡くなりました。はねられた女性は意識不明の状態が続いているほか、男女7人が重傷、女性1人が軽傷を負いました。運転していた大橋さんが事故直前、急性の大動脈解離を発症して意識を失った結果、車が暴走したとみられています。大橋さんは亡くなりましたが、大阪府警は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で書類送検するか慎重に検討しています。捜査の焦点となるのは、自覚症状があるまま運転したか、正常運転ができないことを予測できたかの2点です。

読売新聞では、事故当時現場で負傷者の応急処置にあたった男子学生(28)の話が載っています。男子学生は、車にはねられ歩道上に倒れていた30歳代くらいの男性の応急処置にあたりました。頭からは血が流れ出ており、呼びかけても反応はありません。学生は、とっさに自分のマフラーとタオルを取り出し、男性の傷口に当てました。周辺では、通行人らが消防や警察に通報するとともに「大丈夫ですか」と負傷者に寄り添っていたそうです。そばにある「新阪急ホテル」の従業員らも、タオルや毛布を配っていました。

無我夢中で応急処置にあたったという男子学生。「果たして自分は同じことができるだろうか」と考えてしまいます。中学校での授業や運転免許を取る際に、応急処置の方法は学んでいます。多くの方がそうでしょう。しかし目の前で人が倒れていたら、とっさに行動できるかどうか……。分かりません。

今回の事故で、「誰もが被害者にも加害者にもなり得る怖さ」を実感しました。「正常に運転できるかどうか」というドライバーの自己管理はもちろん大切ですが、私たち一人ひとりが思わぬ事故の被害を減らす努力を求められています。

 

参考記事:

3月3日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)37面(社会)「運転中に急病 その時 梅田暴走1週間」

同日付 読売新聞朝刊(大阪14版)35面(社会)「応急処置 無我夢中で 通行人の男子学生」