小売業界へ(※文量多いけど、読んでね)

今朝、インターホンが鳴りました。「お届け物でーす」。伝票にサインをし、荷物を預かる。配達員の方は深々と頭を下げ、集配作業へと戻っていきました。届いたのはインターネット通販で購入していた雑貨でした。注文したのはたった2日前。スピード注文でも何でもない。通常の注文でこの速さ。最近では即日での配達も可能だと聞くと、驚くばかりです。遠方にいて入手できないものや、自身で運ぶのが困難なもの。それらの購入をネットは可能にします。ネット通販はもはや欠かすことのできない、生活インフラになりつつあります。

ネットで買い物をする人が増えるとどういうことが起きるのか。まず思いつくのが「物流」への影響です。「ものを運ぶ」という作業が増えれば、それだけ人手が必要になります。荷卸し係、ドライバー、配達員など、加速度的に人員が不足するでしょう。

その物流面での弊害を克服するのに期待されているのが「ドローン」です。小型の無人機で荷物を運ばせる。実現できればかなりの経済効果が見込めるでしょう。そのため、楽天とヤマト運輸は2020年の事業化に向けて動き出しました。千葉市で4月にも実証実験を始める予定です。気象データなどを精査し、実際に物流倉庫からマンションの上層階へと配達を試みるそうです。インターホンのモニターにドローンが─。おおげさですが、そんなことも遠くない将来に起こりうるかもしれません。

ネット通販の普及による弊害は乗り越えられる。こういう話題を聞くと楽観的になってしまいます。しかし、問題はそう短絡的なものではありません。小売業が危機に瀕しているのです。

米スポーツ用品大手「スポーツオーソリティ」は2日、経営破たんを発表しました。今後は銀行からの融資を得て経営再建を目指すそうです。スポーツオーソリティは日本でも107もの店舗が展開されています。しかし、日本国内ではスポーツオーソリティは1995年、イオンと共同会社を設立。その共同会社はイオンの子会社になっており、日本での直接の影響はないということです。

このニュースを伝える朝日新聞の記事はこう結ばれています。

米国ではアマゾンに代表されるネット通販が急速に広がっており、店で売るスタイルが中心の小売り大手は客を奪われ、大量閉店や経営破綻(はたん)が相次いでいる。

なるほど、小売業界はネット通販に押されつつあるそうです。加えて、アメリカではドローンによる宅配事業化が着実に進行しています。日本よりもずっと早く。実際、米アマゾンは実証実験を進めており、カナダなど国外でも配達実験を手掛けています。小売業界が淘汰されていくスピードは、今後も加速していくでしょう。

私はネット通販の功罪を云々いうつもりはありません。問題は、小売業界の危機意識です。どこかで「大丈夫だろう」と安直に考えてはいないか。保守的な思考の下にあぐらをかいてはいないか。非常に懐疑的です。現にアメリカではスポーツオーソリティをはじめ、数々の小売業が倒産の憂き目にあっています。アメリカは消費大国です。国内総生産(GDP)の実に7割を消費支出が占めています。日本もアメリカ同様、景気動向は消費が引っ張る構図が続いています。小売りがつまずけばどういう事態を招くか。想像するのは容易でしょう。ネット通販と競い合っていくには、小売業界の危機意識を変える必要があります。アメリカの事例を他山の石とし、変革を進めていってほしい。それでなくても、ドローンの活用でネット通販は伸びしろがあるのだから。

 

参考記事:

2日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)1面「ドローン宅配 事業化検討」

4日付 朝日新聞朝刊(同版)経済面「米スポーツオーソリティ苦境」