「火と氷の国」アイスランドのエネルギー政策

どこまでも続く広大な雪原と、苔に覆われたゴツゴツとした岩の大地。

2月末から1週間、アイスランドを旅しました。日本から飛行機で丸一日かけて到着。イギリスよりさらに北にあり、凍えるような寒さを覚悟していましたが、気温は0度ほど。高緯度地域にありながら、周囲を流れる暖流の影響でそこまで寒くありません。

アイスランドの歴史は874年のヴァイキングによる「入植」から始まります。ノルウェーのインゴルフル・アルナルソンというヴァイキングが一人目の入植者であると言われています。現地ガイドの方の話では、海からアイスランドを見たときに、陸地に地面の噴気孔から蒸気が上がっているのを見たのを煙だと勘違いし、「煙たなびく湾」=アイスランド語でレイキャビク(Reykjavík)と名づけたそうです。現在レイキャビクはアイスランドの首都の名前となっています。

旅の疲れを癒しに、有名観光地である「ブルーラグーン」を訪れました。レイキャビクからバスに乗って50分ほど。敷地面積が約5000平方メートルの世界最大の露天風呂です。温水は、すぐ隣にあるスバルツエンギ地熱発電所の排水を利用しており、自然と溜まっていた排水に発電所職員が入り出したことがきっかけで生まれた温泉だそうです。

「ブルーラグーン」奥には地熱発電所がある

アイスランドでは電源構成に占める再生可能エネルギーの割合が100%を誇ります。それを支えているのが、氷河や湖からの豊富な水力と、火山大国ならではの地熱。水力発電が総発電量の7割、地熱発電は3割を占めます。

日本と同様で、化石資源の乏しいアイスランド。かつては石油、石炭を輸入しており、暖房用エネルギーの多くを化石燃料に頼っていました。しかし、1973年の石油危機を機に、政府は国産の再生エネルギーの重要性を感じ、地熱と水力による発電を増やしていきました。現在、家庭での暖房の9割が地熱で賄われている他、地熱発電所で使われた熱水は、パイプラインを通して、都市部に運ばれたり、ブルーラグーンなどの温泉、トマトやきゅうりなどの野菜を栽培できるように温室などで利用されたりもしています。また発電コストの低さから大量の電力が必要となるアルミの精錬事業などに利用され、漁業や観光業と並び、主要産業となっています。

日本では、地熱発電所を建設しようとしても火山がある土地が国立公園内にあったり、発電所建設によって温泉が枯れてしまうのではないかという温泉事業者からの不安の声あったりと、普及が進んできませんでした。

人口およそ32万人のアイスランドと1億人以上を抱える日本では規模感が全く違うという声もあるかもしれません。それでも、北海道から九州まで火山と温泉に溢れたこの国で地熱発電の割合を増やしていくことは可能だと思います。大自然と共存しながらクリーンなエネルギー開発に取り組む姿に、同じ島国としてたくさんの学ぶべきところがあるのではないかと感じました。