美容整形の低年齢化 中高生も当たり前になる?

最近、インスタグラムを見ていると整形のビフォーアフターの動画が流れてくることがあります。よく出てくる広告の類いかもしれません。ですが、驚かされるのは、中学生、高校生の施術の様子まで出てくることです。今の時代、美容整形をする生徒も少なくないのでしょうか。そういえば、去年の春ごろ、電車の中で学生向けの二重整形プランを紹介する美容クリニックの宣伝を目にしたのを思い出しました。

調べてみると、学割制度を用意した美容外科も少なくありません。ただ、18歳未満の未成年の場合には、本人の意思だけでは受けられず、保護者の同意書が必要となるようです。実際に、10代の来院者は年々増加傾向にあり、2020年までの6年間で来院者数は4倍、二重手術をした患者数は約38.5倍にもなったという調査結果もあります。

若者の美容意識はなぜここまで変わったのでしょう。筆者としてはスマホ、SNSの普及が大きいと思います。小学生がスマホを持っていてもおかしくない時代。おのずとinstagramやTikTokなどのSNSに触れるようになります。筆者のインスタに流れてきたような施術動画を思春期の10代が見たら、「こんなにあか抜けするなら、私もしたい!」と思うのでしょう。また、二重整形の投稿には、「#中学生」「#高校生」「#未成年二重」などというタグが付いていることもあり、「他の子だってしている」という安心感もあるのかもしれません。

筆者撮影、「#未成年二重」を押すと、100件以上の投稿が表示される

コロナ禍でのマスク事情が関わっているとも考えられます。感染予防のために、外出するときにはいつもマスクを着けています。顔の下半身は隠れてしまうため、目元が強調されます。先ほど述べた調査結果では、二重手術をした10代の患者数は、2019年から20年にかけて2.3倍に急増しています。顔のすべてが見えず、目元だけで印象が決まってしまうため、目力を強くしたいという人が多くなっているのでしょうか。

また、「プチ整形」というお手軽感もあるのでしょう。目元だけなら、身体への負担も少なく、クリニックを選べば学割もあります。二重整形では、施術方法によっては1日で完了し、肌の状態が元に戻るまでの「ダウンタイム」を含めても2、3日ほどで済むものさえあります。また、費用も数万円からなので、お年玉やアルバイト代を貯めれば難しくなさそうです。

実際に、街を歩いていても大学生の筆者以上にしっかりとメイクをしている中学生や高校生を見かけます。また、中学校時代には、毎日アイプチをして登校してくるクラスメイトがいました。二重術の1つである埋没法では、まぶたの皮膚を切ることなく、糸でまぶたを引っ張り上げるだけのため、抜糸してしまえば元に戻すことも可能です。アイメイクの延長線上の感覚でしょうか。

確かに美容整形は、個人がそれで満足し、前向きになることができれば良いと思いますし、「人間は顔がすべてではない」という言葉も、悩んでいる人にとってはただのきれい事でしかありません。それでも10代半ばの若者が外科手術で顔を変えてしまっていいのでしょうか。疑問が残ります。ある程度、大人に近づいたとはいっても、まだまだ成長段階にあることには変わりはありません。また、一時の感情で「顔変えたい!」と思っても、何年かすれば戻したくなる時もないとは言い切れません。思春期は、「自分の顔やだ」「かわいくなりたい」と思い込んでしまいがちですが、年を経れば顔以外の価値基準も大きくなっていきます。

きわめて若いうちから顔にコンプレックスを抱き、それを直すことを厭わなくなることで、顔面至上主義的な歪んだ美意識が植え付けられかねません。整形は自己満足のためのものかもしれませんが、教育的な側面からも大人がいさめる必要があると感じます。

美に対する意識が高まっているのは確かです。筆者の母は、「私があなたくらいの歳のときは、ありえなかった」とよく言います。同じことを聞かされるのでうんざりしていましたが、もはや筆者もその立場になったのでしょうか。未成年の10代が整形することは、令和の新常識になっていくのか、気になります。

 

参考資料:

PR TIMES、「【未成年122名へ「美容整形事情」を調査】10代女性の9割以上「整形したい」と回答、うち半数が「二重を希望」 ~ もしも親に「整形したい」と伝えたら? 9割以上「賛成してくれると思う(94.3%)」