AIトークサービス「ChatGPT」で変わる文章のあり方 大学は変革に対応できるか?

Chat GPTというサービスをご存知でしょうか。これはAIと人間さながらに会話ができるサービスです。実際にChat GPTに「ChatGPTってなに?」と打つと、数秒の後に「ChatGPTは、OpenAIが開発した自然言語処理の大型の言語モデルです。GPTは Generative Pre-trained Transformerの略であり、それは、大量のテキストデータを学習し、人間のような自然な文章を生成することができるという特徴を持っています。それは、質問応答、文章生成、文章の要約などの様々なタスクに使用されることができます」という返答が返ってきました。

このサービスは現状では、ほぼ万能といってもいい文章作成ツールです。例えば、小説を書こうとするなら、自分が思っているような設定を与えればAIが自動的にストーリーを生み出してくれます。分量も指定することができ、感動的な展開にするか、悲しい文章にするかなど方向性も調節できます。実際に筆者が使ってみたところ、サラというバスケットボールプレイヤーが、決勝戦で敗退したあと努力し、翌年の大会で優勝するという英語2000語程度の小説をたった20秒で創作してきました。文章としても非常にまとまっており、「人間が書いた」と言われても信じてしまいます。こうした文章作成AIの技術がより進めば、作家の生活に多大な影響を与えるかもしれません。

実際にイラストレーターの世界では人間を超える画力を持つAIの登場が起きています。Chat GPT をリリースしたOpen AI社が出している DALL-Eというサービスでは大量の画像を機械学習させることで、文章をもとに芸術的な絵画や写実的なイラストを即座に創作してくれます。イラストの専門学校に通っている友人は卒業後職を得ることができるのか、今後何十年も食べていけるのかと心配していました。

文章にしろ画像にしろ、AIの成長速度はすさまじく、今後さらなる成長が見込まれています。高度な会話のなかでわからないことがあればAIに聞けば適切な答えがすぐに返ってきます。知識のあり方そのものが変容していくのかもしれません。

より具体的なところに目を向けると、高校や大学の課題はこうした技術で形骸化していくでしょう。筆者は今英語の授業を受けており、一ヶ月に一度自由に選んだ英語の本を読み、800-1000語の英文でブックレポートを提出しています。筆者はしていませんが、学内で横行している「ズル」のやり方は、原作が英語で日本語に訳されている物語を読み、日本語でレポート書いた後にDeeplという翻訳サイトで丸々英語に訳すというものでした。

これでは語学力が向上することはないでしょうが、少なくとも本を読む必要はあります。しかし、ChatGPTの登場で課題への対応はますますたやすくなるでしょう。実際に今月筆者が提出した「マクベス」の要約と概要を英語約800語で書いてもらったので、ぜひ読んでみてください。当然ですが、筆者が提出したものよりもよくかけています。

こうした単調な要約以外にも、歴史学のレポートや経営学のレポートなどGPTが活躍できる領域は広大です。先日EU論という授業で「EUの環境政策が各国ごとではなくEUとして行うことに対する賛成と反対の意見を述べよ」という問いがありました。これもGPTを用いれば何も考えず回答することができてしまいます。

ChatGPTにより、学生の文章力が劇的に低下するのではないか。そうした危機感から、文章が機械的に作り出されたものか否かを分析するプログラムを作った男性が1月17日にネット上の記事で紹介されていました。GPTZeroと名付けられたアプリでは、こちらもChatGPTを用い、文章の作成にAIシステムが関与したか否かをチェックできるそうです。

GPTZeroのような剽窃チェックアプリはありますが、それを超えるような精度の作品を作るAIも出てくるでしょう。技術による「いたちごっこ」は今後も続いていきます。学校側は、学生はきっと自力でやってくるだろうという性善説に沿った対応を取るべきではありません。AIを使ってもできないような課題を作るか、AIを用いて考えていくような課題を作るか、AIには答えられないような課題を作るかということになるでしょうが、何れにせよ急速に対応しなければ、大学が「ズル」や「パクリ」の横行する大卒資格をとるだけの施設に堕してしまいます。

最後にChat GPTに「Chat GPTが今後学問に与えるネガティブな影響」を聞いてみました。

「Chat GPTは大規模な言語モデルであり、人間のような文章を生成することができます。しかし、それは純粋に人間のように文章を生成するだけでなく、誤った情報を生成する可能性もあります。例えば、Chat GPTは人工知能のモデルとして学習してきた情報を元に文章を生成しますが、その学習データに偏った情報が含まれている場合、それが反映された文章を生成する可能性があります。また、Chat GPTは人間のように文章を生成するため、人間が持つ偏見や誤った情報も反映される可能性があります。これにより、正確な情報を提供することができないことがあり、それが社会や学問に与えるネガティブな影響をもたらす可能性があります。そのため、Chat GPTを使用する際は、生成された文章の正確性や偏った情報の可能性を確認することが重要です。また、学習データの正確性やバイアスについても注意することが必要です。」

就活、バイト、サークルと大学生は多忙です。そうしたとき日々の細々とした課題に手が回らず、手抜きしたくなる気持ちはわかります。しかし、そんなときになんのために大学に通っているのか、自問しなければなりません。高額な学費を払ってなんの成長もできないのでは意味がありませんし、GPT自身が言っている通り誤った回答が返ってくるリスクも存在します。大学も学生も、技術革新への対応に備えなければなりません。

 

 

参考記事

日経新聞電子版「Microsoft、話題の対話型AI「ChatGPT」をクラウドで」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN173IG0X10C23A1000000/

PLANET MONEY 「This 22-year-old is trying to save us from ChatGPT before it changes writing forever」

https://www.npr.org/sections/money/2023/01/17/1149206188/this-22-year-old-is-trying-to-save-us-from-chatgpt-before-it-changes-writing-for

ChatGPT

https://openai.com/blog/chatgpt/

GPTZero

https://gptzero.me/?utm_source=npr_newsletter&utm_medium=email&utm_content=20230113&utm_term=7823246&utm_campaign=money&utm_id=56617294&orgid=&utm_att1=%%__AdditionalEmailAttribute1%%

DALL・E 2

https://openai.com/dall-e-2/