聖地巡礼が観光客誘致の足掛かりに 「First Love 初恋」の舞台札幌では今

昨年11月24日から配信されているネットフリックスのドラマ「First Love 初恋」が日本国内のみならず世界中で人気を集めています。このドラマの舞台は北海道・札幌。第1話のテーマとなった「ライラック」は札幌の市木です。ほかにも、大通公園などの名所が映し出されたり、北海道にしかないコンビニ「セイコーマート」が登場したりするなど、札幌らしさを感じさせる演出が随所に見られます。筆者は5年前から当地に住んでいるため、慣れ親しんだ光景だと感じましたが、札幌以外に住むファンは札幌を訪問して、登場人物の足跡を辿ってみたくなったのではないでしょうか。

ドラマや映画のロケ地を巡るいわゆる「聖地巡礼」は、大きな経済効果を生みます。韓流ドラマ「冬のソナタ」が大ヒットした2004年には、韓国への日本人観光客数が4月から10月までの間に18万7000人増加し、1072億円の経済効果があったといいます。また、アジア各国で大ヒットした映画「Love Letter」が撮影された北海道小樽市では、アジアから訪れる観光客が公開前年の10倍以上に増えました。映像作品のヒットは、舞台となった土地への注目を集めるだけでなく、実際の町おこしにつながるということです。

札幌市は映像作品に着目しました。文字や音声による情報伝達に比べ、言語の違いを超えて多くの人に情報を伝えることができるためです。それだけ高い宣伝効果を持ちます。2014年5月に制定した「映像の力により世界が憧れるまちさっぽろを実現するための条例」に基づき「札幌市映像活用推進プラン」を策定し、映像の力による経済と地域の活性化を目指しています。プランの一環としてシティプロモート貢献作品への補助制度を実施しており、「First Love 初恋」に対しては約1千万円を助成しています。

また、市と連携して映像コンテンツの撮影やプロモーションをサポートする非営利の公的機関「札幌フィルムコミッション」は、「市民が誇りをもって暮らす魅力あふれる都市」を目指し活動を行っています。この団体はロケーションの提案やロケ地との調整などに全面協力してきました。現在は、ロケ地マップ約2万部を市内の観光地や案内所で配布しています。

こうした支援の見返りとして作品の内容に口を出すようなことがあってはなりませんが、それさえ守られれば作る側は支援を受けられ、市は札幌の魅力を宣伝することができます。両者にとって意味のある取り組みだと思います。

美味しい食べ物や綺麗な景色、雪祭りなどの魅力があり、いつも国内外からの観光客で賑わっていた札幌。新型コロナウイルスの拡大によりその数は激減しました。パンデミックは負の影響をもたらしましたが、人々が映像作品に触れる時間を増加させた側面もあります。コロナ禍前の2019年9月には、ネットフリックスの日本国内登録者数は300万人でしたが、2020年の9月には500万人を突破しています。たった1年で会員数が200万人増加したということです。以前にも増して映像作品の影響力が高まっていると言えるでしょう。コロナで打撃を受けた分、「First Love 初恋」を初めとした映像作品の力を借りて、札幌に活気が戻ってくることを期待します。

 

参考

2022年12月24日 朝日新聞「『First Love 初恋』のロケ地を巡ろう 札幌市でマップ配布」

2004年12月10日 四国新聞「冬ソナ効果、2300億円/第一生命経済研が試算」

 

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