中国・ゼロコロナ政策への怒りの抗議とその後

中国で行われたゼロコロナ政策に対する「白紙の抗議」から約1カ月が経ちました。その後の中国の様子は、どうなっているのでしょうか。

事の発端は、先月24日に西部ウルムチ市の高層集合住宅で火災が発生し、少なくとも10人が亡くなったことでした。新型コロナウイルスの厳しい規制による避難口の封鎖によって、人々がアパートに閉じ込められたことが多くの死者を出す結果を招いたと考えられています。

抗議の声は、国内だけにとどまらず、筆者の住むイギリス北部の工業都市グラスゴーにも多くの中国人が押し寄せていました。彼らは“Let people speak”(私たちに話させて)、「自由、勇敢、平安」などと書かれた白い紙を持ち、声を上げることなく土砂降りの雨の中ただ沈黙して立っていました。そばには花束やろうそくが置かれており、その異様な雰囲気から国民たちの静かな憤りが伝わってきました。

グラスゴーでの抗議の様子(11月27日に筆者が撮影)

■「上海」「ウルムチ」など検閲体制が強化

デモであるにもかかわらず、人々が声を上げずに「白紙」で抗議している理由は、中国の言論統制にあります。中国版ツイッターといわれる「微博」(ウェイボー)などのソーシャルメディアでは、今回の件が国民の間で話題になるのを避けるために、「上海」や「ウルムチ」といったワードを検閲対象としています。

検閲に引っかからないようにするため、抗議活動で使用された白い紙から「白紙」や「A4」といったワードをSNS上で使おうという試みが見られたものの、現在ではそういった単語も規制対象となっています。

一方で、ツイッターでは学生の抗議活動を呼びかけるツイートを少数ではありますが、見つけることができました。しかし、中国発でないプラットフォームでも、抗議活動に関するハッシュタグをポルノや賭け事のコンテンツとともに投稿することで、ツイートを規制させるといった取り組みがなされています。

 

■中国もついに「開国」

あれから一カ月が経ち、中国政府のコロナ政策に大きな進展がありました。今月26日、新型コロナ対策の大幅な規制緩和政策を発表したのです。入国時のホテル隔離を撤廃するなど出入国の正常化を進めていく方針です。

今回ほど大規模に政権を直接批判したデモは、1889年の天安門事件以来と言われています。抗議活動を受けての方針転換かは定かではありませんが、結果的に国民たちの悲痛の訴えは功を奏したといえるでしょう。ただし、中国の感染者数はいまだ増え続けています。私たち日本人も油断してはいけません。日本政府は、中国からの渡航者への水際対策を強化する予定です。

 

参考記事:

27日付 日経電子版 「中国、感染拡大下の「開国」 ゼロコロナ転換に警戒も(写真=共同)」

5日付 朝日新聞デジタル「ウルムチ火災の死者「少なくとも16人」世界ウイグル会議総裁訴え」

 

参考資料:

【解説】 ゼロコロナ抗議デモ、中国はどのように検閲しているのか – BBCニュース

中国・広州で新たな「ゼロコロナ」抗議 警官隊と衝突 – BBCニュース

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