防衛省の広報活動 何を目指す?

2022年の世相を表す「今年の漢字」に「戦」が選ばれました。

ロシアのウクライナ侵略や、北朝鮮のミサイル発射など、戦争の恐怖や不安のほか、新型コロナや物価高など生活に身近な戦い、サッカーのワールドカップ日本代表の熱戦などを理由に挙げる人が目立った。

「戦」を揮毫する清水寺の森清範貫主=朝日新聞デジタルより引用

 

「戦」が選ばれるのは、2001年以来、2度目のことです。2001年当時は、アメリカ同時多発テロの発生、世界的な不況との戦いなどが理由として挙げられていました。情勢への漠然とした不安であったり、身近なところにある苦しみであったり。いつの時代も変わらないものなのでしょう。

2023年も「戦」と切り離すことはできないのかもしれません。ロシアによるウクライナへの「核の威嚇」や日本政府が訴える防衛力の抜本的強化など。防衛費増額をめぐり議論が熱くなるなか、防衛省は広報活動を強化しています。そこには、若い世代にアピールして人材確保につなげ、理解を広げることで防衛費の増額議論を後押ししたい思惑があるのです。各地でのパレード開催にとどまらず、ソーシャルメディアをも駆使しています。このような広報活動強化について、防衛省は「国防の議論の重要性が高まってきている。あらゆる機会を捉えて知っていただくのが目的」としています。

防衛省は近年、特に若者へのアピールを強めている。SNSの多数のアカウントを駆使し、登山家の野口健さんや将棋棋士の羽生善治さん、落語家の林家三平さんら26人を「防衛省オピニオンリーダー」に任命したり、自衛隊を紹介するテレビ番組や隊員を主人公としたドラマに協力したりしている。

自衛隊音楽まつりの様子=朝日新聞デジタルより引用

 

大学生である筆者の頭にはたくさんの疑問符が浮かびます。なぜ防衛力の強化が必要なのか。防衛費の増額分がどう利用されるのか。私自身、これまであまり目を向けることのなかった国防や自衛隊について、自分なりに調べてみようと思います。

防衛省の広報活動に求められるのは、ただ自らを称えたり、その正当性を訴えたりすることではありません。ビジョンを示し、国民と対話する場なのではないのでしょうか。もし若者へアピールしたり、防衛費増額に対して国民の理解を得たりしたいのなら、双方向のコミュニケーションが必要不可欠だと考えます。

 

参考記事:

12日付 今年の漢字は「戦」、米同時テロあった2001年に続き2度目…2位「安」・3位「楽」 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

10日付 朝日新聞朝刊(愛知13版) 29面(社会・総合)