「2位じゃダメなんですか」。そんな疑問形の見出しが気になったのは、私自身の心に刺さる言葉だったからでした。それも、ぐさり、と胸が痛くなるくらいに。
13日付の読売新聞によれば、2009年に参院議員の蓮舫さんが放った言葉なのだとか。政権交代ののち、予算を検討する会議でスーパーコンピューター「京」の開発計画について言及した時のものです。開発を推進する担当者たちはうまく答えられず、結果的に一時は凍結という結論にまで至りました。
ただの意地悪な質問と受け取り、感情的に反発するのは楽です。単純に考えれば、2位よりは1位の方がいいはずですから。むしろ、きちんと答えようとする方が大変なのです。1位と2位の差なんて厳密に説明するのは難しい上、1位でなくてもいいなどと簡単に言うこともできないからです。
しかし、同紙の松岡聡さんについての記事を読み、一つの答えを知りました。松岡さんは京の後継となる「富岳」というスーパーコンピューターの開発に携わった研究者です。富岳は、計算速度やその他の指標で、四つも世界1位を獲得しました。それにもかかわらず、開発の当事者が誇るのは順位ではなく、富岳を使えばどれほどすばらしいプログラムを作ることができるのか、ということでした。とてもカッコいいなと思いました。
ぶっちゃけ2位でもいい、と開き直るのではなく、世界1位を達成した上で、研究の意義も忘れない。むしろ、大切なことを知っているからこその1位なのかもしれません。
「2位じゃダメなんですか」。当時、流行語大賞にノミネートされるほど話題になったのは、自らに問いかけた人がいたからなのではないでしょうか。私は、自分が問われている気がして、記事を読み進みました。なぜ1位にこだわるのか、本当に大切なことは何か。そして、どうしてもこだわりが捨てられないなら、挑戦し続けるしかない……そんな勇気をもらいました。
参考記事:
13日付 読売新聞朝刊(14版)28面「『京』の迷走『富岳』に生かす」