日本エンタメ 海外進出に立ちはだかる壁

好きなアーティストが出演した番組をほとんど見ることができない―韓国への留学で真っ先に感じたことでした。

テレビ離れが進むなか、放送中のテレビドラマ「silent」の見逃し配信の再生が500万回を超えるなど、地上波で放送した番組をネットでも見れるサービスが人気を集めています。しかし、TVerやGYAO、Huluなどの配信プラットホームの大部分は日本国外からアクセスできません。筆者が好きなアーティストは海外進出を目標に活動をしているにも関わらず、冠番組や音楽番組を海外から見て、応援することができないのです。

それに対し、エンタメ作品で世界を席巻している韓国はどうでしょう。海外からでも、ドラマやバラエティ番組、音楽番組までほぼ全てを視聴することができます。筆者は日本にいた頃、十分すぎるほどに韓国のコンテンツを楽しむことができていたので、韓国に来て日本のコンテンツにほとんどアクセスできないことに衝撃を受けました。海外でも気軽に楽しめる日本のコンテンツは書店で販売されている漫画、NetflixやYouTubeに上がっている映像作品くらいではないでしょうか。

日本のコンテンツに対する海外からのアクセスを許すことにはリスクも伴います。海外で日本の作品が不法に複製された場合に対応が難しいなど、デメリットも多いのです。現在では音楽活動で必要不可欠となったサブスクリプションサービスも、CDの売り上げが減るなど、良いことばかりではありませんでした。

しかし、それでも日本のエンタメを広げるために海外へのコンテンツ配信の基盤を作るべきだと思います。もちろん不法複製や海賊版の横行は結局制作活動の縮小につながるため、絶対に防がなければいけません。しかし、規制を強くしすぎることで海外進出が阻まれるならばそれも問題です。

先日、5人組アイドルグループKing&Princeのメンバー3人が脱退を発表しました。その理由は活動する中で海外進出への限界を感じたことでした。彼らが所属するジャニーズ事務所は特にネット解禁に保守的な姿勢とされます。他の事務所のアーティストも含め、日本のコンテンツを海外に広めるのは非常に難しいのが現状です。

日本から海外へ羽ばたきたいという若者の夢を、作品の質ではなくビジネスの都合で潰してしまうのは非常に残念なことだと思います。グローバル化に合わせ、日本のエンタメ業界も思い切った変革が求められているのではないでしょうか。

 

参考

11月5日付 読売新聞オンライン「『キンプリ』平野紫耀、岸優太、神宮寺勇太『世界で活躍』望み、来年5月22日脱退してジャニーズ事務所退所へ」

 

11月12日付 ORICON NEWS「SKY-HI、内需にこだわることへの危機感 形骸化したシステム『業界全体で変えなきゃいけない』と警鐘」