「クンパオチキン」 言語の壁超えた中国料理教室

外国人に知られている日本のものとして、最も人気なのが「アニメ」、その次が「寿司」だと思う。やはり食と娯楽。この二つは世界共通で人々の心を大きく動かす魔法の力を秘めている。これは、日本だけではなく他の国にも当てはまる。例えば、世界三大料理の一つに挙げられる中国料理もまた世界中の人々から慕われる食の一つだ。

筆者の通う英国の大学では、週に1度中国料理を通して中国文化を学ぶ会が開催されている。イギリスの現地学生だけでなく、インド人、韓国人、メキシコ人など多くの外国人がこの講習に参加している。全4回の最終回となる今週のテーマは、「クンパオチキン」という四川料理であった。

四川省は、中国の西南部に位置しており、自然が豊かな省である。農作物が盛んな地域で発展した四川料理は、中国料理の中でも名が知られており、麻婆豆腐や担担麺などの辛いイメージを持つ人が多いだろう。今回作った「クンパオチキン」もまたピリッと辛味の効いた炒め物であった

早速調理を始める前に、中国人の学生がスライドを使ってクンパオチキンの歴史について説明してくれた。

「昔、のちの清朝の役人かつ四川省の省長になるDing Baozhenという男がいました。彼は食通で、チキンとピーナッツ、香辛料の3つを非常に好んでいました。そこである日、彼はあえてこれらの3つの材料を一緒に揚げ、唐辛子、四川胡椒、その他の調味料で味付けをしてみました。すると、その味にとても満足したらしく、ゲストを家に招くときは必ずこの料理を作るようになり、これが瞬く間に広まったのです。そしてDing Baozhen が亡くなった後、人々は彼の死を惜しんで、この料理を彼の正式な称号であるTaizi Shaobaoから「クンパオチキン」と名付けました。」

調味料は、既にテーブルに用意されていて、ネギを切ったり、生姜を切ったりといった細かい作業は省略されていたので、初心者でも簡単に体験できるようになっていた。まな板にも用途ごとにわかりやすく色がつけられているので、英語が母国語でなくても簡単に手順に従って調理を進めることができた。また、インド人などの肉を食べない人に向けては、チキンの代用食品も事前に用意されていた。

中華料理の大きな特徴は、調味料の豊富さにある。調味料だけで、醤油、唐辛子、酢、ごま油、四川胡椒、醤油、ネギ、生姜、ニンニク、塩、砂糖、野菜油、乾燥唐辛子と数多くの種類の味付けを行う。

これらの調味料とチキンをフライパンに入れて火をつけると、スパイスが混ざり合う香ばしい匂いが食欲を搔き立てた。数分かき混ぜた後、出来上がったチキンをライスの隣に盛り付けて出来上がり。出来上がったクンパオチキンを、学生みんなで一斉に食した。

集まってきた生徒の大半は「無料で食べ物が食べれるから」「とにかく友達をつくりたいから」といった理由でこの会に参加しており、中国の文化に特別強い関心があるわけではなかった。しかし、中国人の学生との交流や中国料理の講習を受けて、中国そのものへの関心が高まっている学生が多くいたように思われた。中には、苦戦しながらも現地の人と同じように箸を使って食べることを試みている人も何人か見られた。

異文化交流というと、外国人と面と向き合って英語を話して・・・とつい考えがちだが、それだけが全てではない。異文化を学ぶ入り口として、食やドラマ、映画など自分の好きなところから始めてみるのも良いかもしれない。

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