「米国の対中半導体規制」経済ニュース?政治ニュース?

10月7日、中国企業に対しての厳しい半導体輸出規制を打ち出したバイデン大統領。中国への対抗力を強化するため、同盟国にも米国同様の措置を求めています。

強化された規制の中身は、「外国企業でもアメリカの技術を使っていれば、対中輸出を原則認めない」「中国企業で働く、もしくは中国企業と取引をする米国人を審査の対象とする」といったもの。様々な領域での中国に対する優位の確保が狙いです。日経新聞編集委員の菅野幹雄氏は、「専門家の間では、米中関係の摩擦の次元を変えた大きな規制であると言われている。トランプ政権の動きよりも大きなマグニチュードとなる」と述べていました。

今回の異例の措置は、軍事開発の体力を削ぐことも大きな狙いではないでしょうか。米国の高性能半導体は以前から中国の軍事開発に転用されている懸念がありました。最新世代型の半導体は軍事開発の根幹であるAIの開発に使用されており、自律運行型兵器(無人兵器)、監視用AI、核搭載のミサイル等の軍事開発に不可欠です。中国でのAI開発は、米国企業であるNVDIAAMDの半導体に依存しているともあり、今回の輸出規制が痛手となる可能性があります。

この措置が本格的に実施されれば、米国の半導体が使用された製品は、ほぼ中国へ輸出されなくなります。中国は、国内製造の半導体で開発を進めるほかありません。中国の大手半導体メーカー「中芯国際集成電路製造(SMIC)」も半導体を製造していますが、その半導体は14nm世代と呼ばれる世代が古いもの。韓国のサムスン電子や台湾のTSMCは、「5nm」「3nm」という高密度でより高性能な最新の半導体をつくっています。中国を旧式の半導体使用にとどめたなら、軍事開発の根幹であるAI開発を遅らせることができます。経済のみならず、軍事開発の面でも中国に不利な状況ができあがることが予想されます。

このように身近な「半導体」といった製品にも安全保障の問題は絡んでいます。政府が企業の動きにどこまで介入して良いのか。難しい問題ではありますが、私たちを取り巻く環境が日々厳しさを増していることを考えれば、先端技術の話題は経済安全保障の視点と併せて理解する必要があると思います。技術や製品の流出が軍事的脅威や経済の損失に繋がる、こういった緊張感も忘れてはいけない視点ではないでしょうか。

【参考記事】

日経新聞デジタル版 「米国、対中半導体規制に追随求める 日本など同盟国に」

読売新聞 11月4日付 東京12版 「米、中国対抗へ半導体新法」

【参考資料】

「2030 半導体の地政学」太田泰彦 日本経済新聞出版

「経済安全保障の確保に向けて2022~技術・データ・製品等の流出防止~」公安調査庁

「米国が課した半導体の輸出規制は、中国に深刻な打撃をもたらすことになる」wired