テロに思う、ジャーナリズムにできること

 

トルコの最大都市イスタンブール。歴史的建造物が多く、欧州やアジア諸国からたくさんの観光客が訪れます。筆者も、留学中に友人や母親と旅行した思い出の場所です。そんな思い入れのある土地での悲劇。昨日、夕方のニュースを見て大きなショックを受けました。

イスタンブールのスルタンアフメット地区で12日午前10時15分(日本時間同日午後5時15分)過ぎ、大きな爆発がありました。クルトゥルムシュ副首相が緊急会見し、10人死亡、15人負傷(うち2人重傷)と発表。同日午後に会見したダウトウォール首相は、過激派組織「イスラム国」(IS)の外国人戦闘員による犯行だと断言しました。現地のメディアによると、死傷者の多くは外国人観光客で、死者のうち9人はドイツ人だといいます。クルトゥルムシュ副首相は、現場に残された遺体を検査した結果、「1988年生まれのシリア出身者」の犯行と判明したと説明しています。

現場近くにいた土産物店を経営する男性は、「ものすごく大きな音でびっくりした。店から出て爆発現場の方を見たら、バラバラになった人の体が散らばっていた。私の近くにはドイツ人観光客のグループがいたが、衝撃のあまり泣いていた」と話しています。現場の悲惨な様子が浮かびます。負傷者にドイツ人が多く含まれていたことから、ドイツが標的にされた可能性も指摘されています。

「イスラム国」の実効支配地域があるイラクやシリアに隣接するトルコは、「イスラム国」との全面衝突の懸念などから、米国主導の対IS空爆には参加しない立場でした。しかし昨年7月以降、米国主導の対IS有志連合に加わり、独自の空爆も実施しました。今回の自爆テロとみられる凶行は、トルコの「イスラム国」に対する姿勢への報復だった可能性も高く、さらなる治安の悪化が心配されます。

トルコにいた頃、多くのシリア人と出会いました。祖国を逃れやってきた人々。小さな子どもから大人まで、いろんな人がいました。トルコのボズクル欧州連合(EU)相は11日、トルコから欧州への難民流入を抑制するため、「シリア人に向けた労働許可証の付与を計画する」と語ったところです。しかし、今回のテロはこのような政策に影響を与えるかもしれません。

昨年フランス・パリでテロが起きたとき、「普通の暮らしを続け、テロに屈しない」フランス人の姿が伝えられました。トルコも同様に、テロに屈せず観光都市をこれからも築いてほしいものです。そして、メディアも「どこで、何人死亡」という場所や数字にとらわれず、中東地域の問題の根源、草の根の姿をきちんと報道していくことが必要だと考えます。

 

参考記事:

13日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)1面『トルコ爆発10人死亡 観光客犠牲 首相「IS犯行」』,11面(国際)「トルコ観光地に衝撃」

同日付 読売新聞朝刊(大阪14版)1面,2面(総合)「トルコで爆発10人死亡 世界遺産地区、自爆テロか」

同日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)1面「トルコ自爆テロ10人死亡 「イスラム国」犯行と首相」,7面,社会面「世界遺産の名所、標的に 自爆テロトルコ観光に打撃」

 

12日付 日本経済新聞夕刊(大阪4版)3面(総合)『トルコ閣僚「難民に労働許可」』