地方選挙 「多選」の是非は

7月10日の投票に向けて、参院選の立候補者たちは鎬を削っている。

これと合わせて、いくつかの自治体では市長選や市議会議員選挙が行われている。日本の総理大臣は任期を満了することなく、退任することが多い。そのため、同じ政治家が長期間政権を握ることがない。対照的に、地方においては立候補者の「多選」が争点となることがしばしばある。

長期的な在任は一貫性のある政策を実施することもでき、また前任者からの移行期間を考慮すれば、ある程度、長期的スパンでの舵取りの必要はあるだろう。しかし、その一方で、政治腐敗の可能性が否めないのは確かである。多選を禁止することで得られるメリットとしては、汚職や癒着、忖度など権力の腐敗を防止できることや、政治的な新陳代謝の向上が見込まれる点である。

現段階では、連続任期の限度を定めた法律はなく、これらの対応は各自治体の条例に任せられている。2007年に神奈川県で「神奈川県知事の在任の期数に関する条例」が県議会で成立したが、具体的な施行日がなく、法的拘束力は持っていない。横浜市のように、禁止ではなく多選自粛条例を制定する自治体も多い。これには一定の抑止効果が見られるというが、多選禁止条例と同じく強い力はなく、努力目標に過ぎないというのが現状である。そのため、去年の名古屋市長選などにおいて、現職の市長が自粛条例を無視し出馬するケースも見受けられた。

市民からすると、市長や市議会議員の選挙は、知事や国会議員とは違い、伝わりづらく、なかなか関心を持ちづらいというのが正直なところだと思う。また、行政単位が小さくなればなるほど、政治腐敗の事実があったとしても、それが報じられることは少なくなる。市長選では、在任年数の多い現職に、市長としてはノンキャリアである者が挑むという形で選挙が繰り広げられることが珍しくない。そうなった場合に、地元での知名度や長年の安定感、もしくは多選のデメリットのどちらに有権者が重きを置くのかは、一概には言えないだろう。

地方分権が推し進められるなかでは、地方行政の改善、健全化はより一層求められる。多選によって必ず政治腐敗が起きるのかは分からないが、可能性がゼロではないからこそ、それを未然に防止するシステムが必要とされるのではないのか。

 

参考資料:

中日新聞オンライン、2021年3月30日、「『多選』の是非、議論激化 名古屋市長選

 

参考記事:

26日付読売新聞朝刊(東京14版)21面、「調布市長 長友氏6選」