「Z」を巡る物語

私は2000年生まれ。自分の年齢が分からなくても――よく忘れますが――今が西暦何年か思い出しさえすれば大丈夫。22年なら「22歳になる年だ!」と分かるのがちょっとした自慢です。

世代でいえば「Z世代」に当たります。Z世代とは、一般的には1995~2010年ごろに生まれた人たちのこと。生まれながらにしてインターネットの存在が当たり前で、「現実主義」などの特徴があるそうです。くわしくは昔の先輩の記事をどうぞ。

X世代、Y世代に続くので、Z世代。『デジタル・ネイティブが世界を変える』(ドン・タプスコット)によれば、「X世代」の名称はカナダの小説のタイトルにちなんでいます。「Z」という単語自体には、深い意味はないようです。

でも「Z」って、響きだけでなんだかカッコいいですよね。世代名称以外では、たとえば通信教育の「Z会」、ガールズグループの「ももいろクローバーZ」、アニメ「マジンガーZ」。母は日産自動車の「フェアレディZ」を挙げました。アルファベット最後の文字「Z」は「最後」「究極」「後がない」といったニュアンスを表すことができるので、さまざまなシーンで用いられます。

一方で、良くない印象を与えるケースも。16日付の読売新聞には、格安航空会社(LCC)のジップエア・トーキョーが、機体に描かれた「Z」を消して新デザインに変えるというニュースがありました。理由の一つは、ウクライナに侵攻するロシア軍が「Z」を掲げていることです。「(乗客が)不安な思いをすることがないように」。同社の西田真吾社長の言葉にハッとさせられました。だって私は「Z世代」です。「Z」だと胸を張ることで、いやな思いをする人もいるかもしれません。

でも、今こそ「Z世代」だと意識したいのです。日本が島国だからといって、世界の事情に無関心ではいられない時代に生まれました。今私たちに何ができるのか、今までの世代とは何が違うのか、知る必要があると考えています。

インターネットを使って、世代や国境を超えて人とつながれるのは最高です。私はゲームの中でアメリカ人の友達ができました。これからも、媒体が何であれ、人と人とのつながりが大切だという事実は変わらないことでしょう。人と生きるとはどういうことなのか考え続けたいです。

奇妙な偶然もあるものです。1905年の日露戦争で、連合艦隊を率いた東郷平八郎は「この戦いに負けたら後はないぞ」と「Z」を表す信号旗を掲げました。結果は日本の勝利。現在ロシア軍が掲げる「Z」は、日本海軍の「ロシアへの勝利」のシンボルでもあったのです。

「Z」。たった一つの文字に、無数の物語があります。私にとって、とてもワクワクすることです。

参考記事:

16日付 日本経済新聞(12版)15面「ジップエア、機体の『Z』変更」