ドローン リスク乗り越え、技術育てる姿勢を

空を自由に舞う飛行機やヘリコプター、皆さんも一度は憧れた経験をお持ちではないでしょうか。筆者もその一人です。近年、空が身近になる技術が開発されましたが、価値と課題のジレンマに陥っているようです。我々はどちらを取るべきなのでしょうか。今日はドローンをテーマに、新しい技術に対して我々が取るべき姿勢を考えていきたいと思います。

2016年春、ソニー系企業が大雨の被害で孤立した被災地に、小型無人機「ドローン」で救援物資を輸送する国内初の事業の開始を目指しています。自治体や医療機関の要請で、道路の寸断、車や船が近づけない場所の被災者へドローンを用いて、医療品や通信機器などを届けることを想定している模様です。ソニーの完全子会社「ソニーコミュニケーションズ」とロボット開発企業「ZMP」が共同で設立したドローンの開発製造を手掛ける新興企業「エアロセンス」(東京都文京区)が来年1月から2月まで、経済産業省と共同で千葉県内で試験飛行を行い、安全面の検証の後、早ければ3月以降に運用を開始します。ドローンの飛行ルールを定めた改正航空法では、人口密集地や空港、夜間、目視できない場所での飛行は原則禁止とし、飛ばすためには事前に国の許可を要する定められていますが、救援活動では事前許可が不要と定められ、同社は事業環境が整ったと判断しました。他業界では、ネット通販大手のアマゾンがドローンによる配送を計画しているなど、様々な分野での導入が検討されているドローン、今後の利用拡大に注目が集まります。

どのような技術にも良い面があれば、悪い面も存在しています。ドローンも同じでしょう。今回取り上げたような社会性が高く、人々の生活を豊かにしてくれる利用法がある一方、放射性物質を搭載したドローンを飛ばし、首相官邸の屋上に落下していていた事件や、善光寺の祭事中にドローンが祭りの隊列の中に落下する事件など、悪意ある人物の使用や事故の危険の可能性も払拭しきれていません。日本でドローンに関する事件が報道された際、世論では規制を求める声が高まりました。筆者個人としても、確かに危ないとは感じます。ですが、このようにすぐ規制という姿勢には非常に残念な思いを持っていることも事実です。負の側面を見てばかりで、その技術がもたらしてくれるものを未来永劫、閉ざしてしまうことは長い目で見たときに、社会全体の利益に適うのでしょうか。その点について、筆者は疑問を感じています。

どのような技術でも完璧はあり得ません。自動車は発明時に比べ、時間をかけ格段に進歩しましたが、どうしたって事故は必ず発生します。ドローンのような「若い」技術であればなおさらです。しかし、技術の不安定さは進歩により、徐々に解決され事故も各段に減少するでしょう。そして何より、新しい技術はそれまで社会になかった価値を提供することで、課題を解決し、社会を発展させる可能性を有してます。ではここで、新しい価値やビジネスが生まれる可能性と、徐々に解決される事故のリスクを天秤にかけてみましょう。どちらを取るべきか、筆者は自明という印象を持っています。

今はなくてもいい物かもしれません。しかし、我々の選択が将来世代の選択肢を増やすことにつながり、奪うことにもつながります。我々が新しい技術に対し、取るべき姿勢は将来を見据えた視点、技術を育てる視点ではないでしょうか。それがものづくり大国の国民として、あるべき姿勢だと感じています。

参考記事:27日付読売新聞朝刊(東京14版) 1面「ドローンで救援物資」、6面(経済面)「ドローン参入 活発に」