日本映画、ヨーロッパにも伝えたい

みなさんのお気に入りの映画が、海外でも受け入れられていたら、それはとてもうれしいことですよね。シアトルでの留学中、”The wind rises”(風立ちぬ)を観たというアメリカ人の男性に「宮崎駿の映画は素晴らしい!!」と絶賛されたときの感動は今でも覚えています。

日本映画は日本の文化を海外に発信する大きな役割があると思います。しかし、ヨーロッパに進出するのには課題があるようです。それはEU主要国が映画館に自国映画の上映を義務付ける「スクリーンクオータ制度」があるからです。日本政府はEUと進める経済連携協定(EPA)交渉で、この制度を見直すように求めている、と読売新聞が伝えています。

EPAは関税撤廃やさまざまな経済領域での連携強化、協力の促進などをも盛り込んだ条約です。また物の移動だけではなく、人の移動、知的財産権の保護、投資などにも効力が及ぶのが特徴で、日本とEUは交渉の最中です。

「スクリーンクオータ制度」は自国の文化保護を目的に、上映日数などを義務付けています。たとえば、フランスでは、映画館で上映される作品の4割弱を自国映画とするようにしているそうです。この制度により、日本映画が上映されにくい状況になるため、日本政府は「事実上の非関税障壁」になっていると主張しています。

日本映画の輸出と聞くと、「クールジャパン戦略」の一環でアニメ文化やオタク文化を伝えるものという印象を受ける方が多いと思います。しかし、それだけではないと思います。シアトルで私が体験したように、日本とアメリカの戦時中を描いた作品でも受け入れられているのです。それは敵国の日本で零戦を作る人にも、家族がいて、恋人がいて、その時代を必死に生きていたからではないでしょうか。そうだとすれば、この映画は日本の歴史や生活感を伝えたとも言えます。また、中国で公開された「STAND BY ME ドラえもん」は30日間で105億円の興行収入をもたらしました。日中関係が思うように進まない中でも、日本映画は中国の人々に大きな影響を及ぼしています。

映画は文化、歴史、生活を伝える。EUの人たちにも「日本」をたくさん知ってほしい。日本映画を届けやすくするために、「スクリーンクオータ制度」を見直してほしいと思います。

参考記事

28日付 読売新聞朝刊(東京13版)「EU映画保護 見直し要求」(1面)