最近、じゃんけんで負けた方がジュースやお菓子を奢る遊びが友人との間で流行っています。皆さんもこうした賭け事を一度はやったことがあるのではないでしょうか。昔は、損することを極端に嫌うばかりに、勝負の後に友人との仲が悪くなることもあったほど。そういった賭けはやめていた時期もありますが、今は負けても楽しいと思えるようになりました。昔は損得だけでじゃんけんをしていたのに対し、今はその遊び自体が目的になったからです。
この遊びをするとき、決めていることが二つあります。一つは、数百円程度の小額にすること、もう一つはじゃんけん自体を楽しむことです。そうすれば、賭けを「遊び」にとどめておくことが出来ます。
このような「賭け」と「娯楽」の境目が、公営ギャンブルにも問われているのではないでしょうか。
経済産業省が、スポーツの試合結果やプレー内容を賭けの対象とした「スポーツベッティング」の解禁を検討していると報じられました。G7の国々をはじめ、先進国の多くではこうした賭けの導入が進んでおり、多くの収益を生み出しているようです。ギャンブルは胴元が必ず儲かるようにできています。客さえ集まれば巨額の上がりを確実に得ることができるため、日本でもと考えているのでしょう。実際、スポーツ産業は潤い、そこから税も徴収できるなど、高い経済効果が見込まれます。歓迎する観客は少なくないでしょう。
一方で、統合型リゾート(IR)法案で分かる通り、賭博に関しては色々な問題が挙げられます。代表的なのは、のめり込みと八百長の問題です。日本におけるギャンブル依存症の患者数は世界的に見ても多く、2017年の調査では「成人の3.6%」が疑われています。また、昨年、世界76ヵ国の10競技で八百長と見られる不正が確認され、その数は延べ903試合に上ったことが報告されました。スポーツベッティングが導入されれば、更にギャンブル依存症の患者が増えるだけでなく、八百長が広がる素地が生まれかねません。
多数の問題を指摘され、スポーツベッティング解禁の目途はたっていません。しかし、このようなギャンブルはネット上では一部実現してしまっています。連日ニュースになった特別給付金4630万円の誤送金事件でも、全額オンラインカジノに投じたとして話題になりました。海外を拠点とするサーバーを介したネット上での賭けは、日本の賭博法では取り締まることが出来ないのです。
こうした点を考え合わせると、あくまでもスポーツ観戦をより楽しむ方法の一つとするのなら検討の余地はあると思っています。ネット上でなら可能という今のグレーな状況を放置するよりも、公に認めて、しっかりと監督してしまったほうが結果的に問題は少なくなると思うからです。
ただ、賭け自体が目的になり、スポーツが賭け事の対象に成り下がってしまうことは避けなければなりません。そのバランスを保つためには、金額を低く設定することや、上限を設ける等の工夫が求められます。
あくまでも、スポーツは競技がメインで、賭けはその余興のようなものでしかありません。経産省には、ぜひそんな当たり前のことを忘れずに、スポーツベッティングを検討してほしいと思います。
参考記事:
7日付 読売新聞朝刊(埼玉13版)1、3面「スポーツ賭博 解禁案」
8日付 読売新聞夕刊(埼玉4番)1面「スポーツ賭博実現 否定」
2017年 9月29日付 日本経済新聞電子版「ギャンブル依存症疑い3.6% 既往含む、諸外国より高率」