「130万円の壁」緩和なるか?

103万円と130万円。アルバイトやパート勤務をしたことがある人なら、この金額を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。パート労働などの収入が103万円を超えると、その専業主婦や子どものいる世帯は所得税を軽くする配偶者控除が受けられなくなります。また、130万円を超えると年金や健康保険など社会保険料が発生します。この現行制度は、税金や控除の枠から外れることでかえって手取りが減らないように、主婦層が労働を抑える原因とみられており、「103万円の壁、130万円の壁」と呼ばれています。

一方で、人手不足が懸念されている日本の労働市場。この状況を打破すべく、政府は新たな補助金制度を画策しています。就労時間の延長と賃上げを条件に企業に補助金を配り、社会保険料の負担を和らげようというのです。社会保険料は、労働者と企業が折半する形で支払っています。企業は国から得た補助金を使って、社会保険料を支払うと同時に労働者の賃上げを行います。労働者も増額した給料から社会保険料を支払うことで、「壁を超えないように」と働くのを控えていたころよりも、手取り収入を多く得ることができます。塩崎厚生労働相は7日の経済財政諮問会議でこの補助金制度を表明する予定です。

この補助金制度は、はたして労働市場の結成化につながるのでしょうか。筆者としては、期待半分といったところで、もう少し思い切った政策も今後必要になってくるのではないかと感じました。まず、この補助金制度は130万円の壁を緩和するために設定されようとしていますが、それ以前の103万円の壁に対する対策はありません。来年以降に先送りされた形です。また、この制度は実現されたとしても2019年度までの期限付きとされています。この点も、それから先はどうするのかという不安要素を残しています。

今回発表された補助金施策により、労働環境をさらに活発化させようという意志は感じることができます。しかし、これから私たちが迎える人口減少社会においては、契約社員やパート労働者の支援に終わるだけでなく、その人たちを「正社員化」していく努力も必要なのではないでしょうか。補助金という形で単にお金を還元するだけではなく、「しっかり働いて、しっかり税金も納める。それでも余裕がある。」という状況まで労働環境をステップアップさせることができれば、日本の抱える人手不足という課題の解決に前進できるかもしれません。

参考記事:5日付日本経済新聞朝刊(東京13版)1面「パート就労拡大へ補助金」

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