学習塾禁止した中国 受験競争は緩和されたのか

昨日、北京で全国人民代表大会(全人代)が開幕しました。今回は、秋に予定されている5年に1度の共産党大会に向けた地ならしと目されています。3期目を目前に控える習近平政権は、どんな国家運営の計画を発表するのでしょうか。隣国の動きが気になります。

さて、昨年の中国を振り返ると、様々な出来事がありました。世界市場を騒がせた恒大集団の経営危機。ゲーム規制の大幅強化。「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」の学校での必修化。これらと並び、日本で波紋を呼んだ政策が「学習塾の禁止」です。営利目的の活動と新規開校がほぼ全面的に禁じられました。中国では学校の宿題量の制限と合わせて「双減」政策と呼びます。

この政策が発表されてから8ヶ月経った今。現地の学生の話を聞く限り、学習塾の数は激減したものの、受験戦争の緩和は進んでいないようです。曰く、「学歴至上主義が人々に定着しきっている。入試制度が続く限り、競争はなくならない」。塾の代わりに家庭教師に頼ったり、学校の補講を受けたりする例が増えているそうです。

家庭教師を雇うには当然お金がかかります。しかも、大人数を一気に指導できる学習塾より指導効率が悪いので、授業料はかなり高め。以前に増して、子供の教育環境が親の経済力によって左右される傾向が強まっています。富裕層にとっては教育費が多少増えたところで問題ないものの、中流階級、すなわち世帯収入が多くないものの子供の名門大学進学を望む層が、特に苦しんでいる模様です。

学校の教員も大変です。今まで生徒が塾通いすることは一般的でした。大抵、小学校入学前から高考(大学入試)を終えるまで。人によっては、院試や海外進学のため、大学入学以降も通い続けます。それゆえ、学校側、特に公立校は、受験指導の大部分を塾に頼っていました。今後は学校が学習管理を強化したり、正規の授業外の補講を増やしたりしなければなりません。ただでさえ業務過多で忙しい教員に、重い負担がのしかかります。

中国では大学受験に失敗して自殺する人が現れることも珍しくありませんが、この競争は双減政策によってすぐに緩和されることはなさそう。子供の負担が減らない一方、親の経済的負担も教員の過労も増えるだけの結果が薄々見えてきています。やはり人々の価値観が変わらない限り、過剰な受験戦争は終わりません。習政権は双減を発表したきりで問題を放置してしまうのか。次なる一手を打ってくるのか。優先順位は低いかもしれませんが、後者に期待したいと思います。

 

参考資料:

5日付 読売新聞朝刊(東京13版)6面「習氏 3期目へ地ならし」

浙江省杭州市郊外にある高校(19年3月筆者撮影)