衝撃を与えた芥川賞受賞作 『太陽の季節』

19日、第166回芥川賞・直木賞が決定しました。芥川賞は砂川文次氏の『ブラックボックス』。直木賞は今村翔吾氏の『塞王の楯』と米澤穂信氏の『黒牢城』のダブル受賞です。

芥川賞は文芸誌に発表された新人作家の純文学小説の中から選考されます。その為、中堅作家によるエンターテインメント小説が対象の直木賞と比較すると時代を反映した作品が多いのが特徴です。

今作も直木賞を受賞した両作が戦国時代を舞台とした時代小説であったのに対して、芥川賞受賞作は、コロナ禍での「メッセンジャー」を主人公とした風俗小説でした。

以上の特徴をもつ芥川賞受賞作は、時に大きな反響を呼ぶこともあります。その代表格は『太陽の季節』でしょう。

石原慎太郎氏(のちの東京都知事)が執筆し、第1回文学界新人賞を受賞。翌年の1956年、第34回芥川賞に選ばれ、映画化もされました。

夏の湘南を舞台に、有閑階級の高校生が「女遊び」に興じるセンセーショナルな小説は、文壇はおろか、日本社会全体に衝撃を与えました。無軌道な若者たちを指す「太陽族」という新語までうまれたほどです。

1956年における『太陽の季節』、「太陽族」に関する新聞記事を調べてみたところ、朝日新聞では45件、読売新聞では281件でした(「聞蔵」、「ヨミダス歴史館」より検索)。なかでも「『太陽の季節』 映画をボイコット」、「太陽族映画に街の抵抗運動」など映画に関する記事が多く、当時は小説よりも映画が問題視されていたようです。中には、「法の規制を望む 太陽族映画の取締り」、「太陽映画に条例発動」との記事があり、いかに「良識ある大人たち」から疎まれていたかがわかります。

筆者も映画版『太陽の季節』を観たのですが、当時の人々が過剰な反応を示した理由が正直わかりませんでした。「十年一昔」とはいいますが、半世紀以上も経つと、同じ作品でも受け止め方が変わってくるのかと正直驚いた次第です。

『太陽の季節』は映画化により、太陽族ブーム、アンチ太陽族運動を巻き起こしました。同作は、戦後の無軌道な若者という「世相を反映した小説」であると同時に、作品そのものが社会問題となった「世相を生み出した小説」でもありました。

ちなみに、石原氏が同作で芥川賞を受賞したのは、23歳、大学生の時です。年度末試験終了後、春休みから同作を書き始めたそうです。

期末試験を終えた大学生の皆さん、暇を持て余しているのなら、ぜひ、筆をとってみてはいかがでしょうか。案外、『太陽の季節』のような大人をあっと驚かせる作品を生み出せるかもしれませんよ。

参考記事:

朝日新聞デジタル「芥川賞に砂川文次さん、直木賞は今村翔吾さんと米澤穂信さんに決まる

参考資料:

現代日本の文学48『石原慎太郎 開高健集』、1970年、学習研究社

日本文学振興会「よくあるご質問 〈芥川賞・直木賞〉