利便性と防犯対策、鉄道会社の取り組み

京王電鉄は10日、22年春のダイヤ改正を発表しました。最も停車駅が少ない特急の停車駅を増やすことが主な変更点です。これまで準特急が止まっていた笹塚と千歳烏山にも停車することになり、準特急は廃止される予定です。

10月31日の夜には、同じ京王線内で刺傷事件が発生しました。犯人は乗客男性の右胸を刺し、車内にライター用オイルをまいたうえで放火したとされています。「停車駅の間隔が長く、逃げ場がない特急を選んだ」を供述していることが報道されました。

「京王線のダイヤ改正は、事件があったからなのか」。疑問に思う利用者もいることでしょう。そこでダイヤ改正の背景を調べてみました。

結論から言うと、直接の関係はないようです。京王電鉄お客様センターの説明では、春ごろから特急の停車駅を増やすことが検討されていたそうです。ダイヤ改正は年1回程度行われており、前回は今年3月13日から変更されています。今度も2022年春から実施することになるようです。「ダイヤ改正には長い時間を必要とし、1か月くらいでは反映できません」。利便性向上のために元々計画されていた停車駅変更でした。

今回のダイヤ改正発表の後、停車駅が増えることで所要時間が長くなり、不便になるとの意見がお客様センターに寄せられました。もちろん、利便性が良くなると歓迎する声も上がっています。京王線沿線には、明治大や中央大をはじめ多くの学校が立地しています。中央大に通う女子学生(21)は「停車駅が少ない特急だから混んでいても乗ることがあった。準特急も特急も同じになるのは少し残念だ」と話します。

乗客の利便性、安全対策など様々な検討がされたうえで、ダイヤや停車駅は見直されます。今回の変更は利用客のサービス向上が目的とされていますが、筆者には、「駅間の安全確保」という視点もあるように感じます。新宿や調布、八王子といった主要駅の乗降客は圧倒的に多く、そうした駅だけを直結する特急の効用は小さくありませんから。

JR東海は11月15日から在来線の一部列車に警備員を乗車させています。ほかにも、JR西日本が在来線に車内防犯カメラを設置することを発表するなど、鉄道各社が防犯対策の強化に追われています。今回のダイヤ改正で、利便性と安全対策を両立させることの難しさを考えさせられました。

 

参考記事:

12日付 朝日新聞朝刊(埼玉14版)33面「通報ボタン、けたたましい音」

11月4日 読売新聞オンライン 「京王線刺傷、配転に不満募らせ退職決めた直後に凶器購入…借金重ね神戸・名古屋・八王子と移動」

11月18日 読売新聞オンライン 「JR東海、在来線に警備員 無差別襲撃事件受け」

参考資料:

京王電鉄ニュースリリース 「京王線 ダイヤ改正を実施します」