模倣犯を生まないために マスコミが出来ることとは

 

鉄道での事件が続いています。8月6日に小田急線で起きた事件では、30代の男性が刃物で乗客を刺し、10人が重軽傷を負いました。10月31日には京王線で。11月8日には、九州新幹線の車内で床に液体をまいて火をつけたとして、60代の男性が現行犯逮捕されました。毎月のように起こる鉄道での事件に多くの人が怯えていることでしょう。東京に住む筆者も例外ではありません。これまで電車に乗ると到着駅まで眠っていたのが、夏ごろから何が起きるかわからないからと気が休まりません。

SNSでは報道が犯人を煽っているのではないかという旨の投稿が増えていきました。九州新幹線の車内で火をつけたとされる男性が「死にたいが死にきれない。京王線の事件をまねした」と話したように、テレビや新聞で流れるニュースに刺激されて事件を起こそうと思う人がこれから先も出てくる可能性は大いにあります。

今月24日、中日新聞朝刊に「模倣犯 生まぬためには」という記事が掲載されていました。そのなかで上智大学の音好宏教授(メディア論)は「猟奇的な供述や画像を繰り返し流すことは模倣犯を誘発する危険性がある」と警鐘を鳴らしていました。また精神科医和田秀樹氏は「生活に行き詰まる中、SNSの『いいね!』のように、犯罪をしてでも誰かからの評価を求める人は少なくない」と事件の背景に自己承認欲求があるとのコメントもありました。

 

厚生労働省はメディア関係者に向けて『自殺報道ガイドライン』を踏まえた報道をするようお願いしている。

画像は資料の一部

 

ほとんどの人が携帯を持ち、SNSで自由に情報を発信、拡散できるようになって数年。以前は「読者が知りたいから」という理由で片付けることができたのが、メディアの普及により報道の仕方にも注意を払わなくてはいけなくなりました。芸能人が自殺した時には、連鎖を防ぐための報道ガイドラインがあるように、模倣犯が出ないようにするための指針も必要なのではないでしょうか。現場で取材にあたる記者だけでなく、編集の責任を負う本社にも考えてもらい、時代に沿った対応をお願いしたいです。

 

参考記事:

11月29日朝日新聞デジタル版「京阪電車内で傷害事件想定し、府警など訓練

11月24日中日新聞朝刊「模倣犯 生まぬためには 京王線事件、画像や供述拡散 識者指摘 報道や社会の変化必要」