軽石による観光業への影響 コロナの反省を生かして

小笠原諸島の海底火山、福徳岡ノ場火山で8月13日に起こった噴火で発生したとみられる軽石の被害が全国へと拡大しています。産業技術総合研究所によると、噴火により発生した大量の軽石は、海流にのり約2か月で1300キロメートル離れた南西諸島に漂着し始めたそうです。

17日付の日本経済新聞では「軽石、20日過ぎ伊豆諸島へ」の見出しを付け、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が公開した軽石の漂流シミュレーションを紹介しました。全国で関心は高く、現在赤潮の被害で悩む北海道でも、11月6日付の北海道新聞に赤潮と並んで軽石の被害が報じられていました。

軽石推定分布(11月24日、JAXAホームページよりスクリーンショット)

福徳岡ノ場では1986年1月18日から4日間海底噴火が起こり、軽石が漂流した歴史もあります。琉球列島から本州にかけて地域漂流が見られたとの記録もありますが、今回のほうが規模は大きいようです。漁港への被害が目立ちますが、観光業の面からも心配が募ります。先日、友人と行った沖縄で実際に見た様子をお伝えします。

沖縄にいたのは11月12日から14日の3日間。毎日のように軽石の話を聞きました。12日にはスキューバダイビングをしたという大学生が話してくれました。次の日にシュノーケリングをすると話した筆者に対し、「軽石ひどいけど大丈夫?ダイビングはあまり軽石の影響はないけど、シュノーケリングは気を付けてね」と教えてくれました。軽石は水面近くを浮遊しています。シュノーケリングのように管で外の空気を直接吸い込む場合に、軽石を飲み込むと確かに危険でしょう。

軽石の到達状況に不安を覚えながら、次の日は沖縄本島北部の恩納村にある真栄田岬でシュノーケリングをしました。ガイドをしてくれたお姉さんに聞くと「今日は軽石が来ていないが、来る日ももちろんある。昨日来たと思っても次の日には別のところに現れているというイメージ」と話してくれました。しかし、浜辺を見ると軽石がすでに大量に漂着しています。海岸線と水平に帯のように連なっているのが印象的でした。大きさはまちまち。大きいものは10センチから15センチ、小さいものは2センチほどのかけらが多かったです。「せっかくきれいなところなのだけど、ちょっと残念。どうしようもない。」と肩を落としていました。

さらに「小笠原からの贈り物とのコメントと一緒にメルカリで売られていた」との話もありました。調べてみたところ段ボールやペットボトルに入れた軽石が1000円ほどで販売されていました。しかし、軽石の成分が分かっておらず、安全性が不明なため、沖縄県は持ち帰りをしないよう呼び掛けており、メルカリは8日から出品を禁じています。その影響か、出品後に削られたものがある一方で、禁止後にも出品された例も見受けられました。

軽石が来たときはどうなるのかを尋ねると、「ウェットスーツに軽石が入り込む。前のファスナーを開けるとジャラジャラ、という感じ」と教えてくれました。沖縄の他の地域では15日の時点で、ダイビングだけで80件以上、200人以上のキャンセルが出ており、観光業への影響も多大です。

沖縄本島のほぼ中心に位置し、県指定の名勝で天然記念物でもある観光スポット「万座毛」へも行きました。象の鼻のような形の岩が特徴的で、断崖からは東シナ海を一望できます。しかし、ここにも軽石が。青く澄み渡った海に灰色の軽石の帯が流れてきていました。

万座毛に流れ着く軽石。右端の灰色の部分が軽石(13日筆者撮影)

万座毛に軽石が流れてきている様子(13日筆者撮影)

沖縄は有名な観光地が多く、経済効果もそれだけ大きいのです。コロナでの打撃に加え、今回の軽石。漁業だけでなく観光業や生態系、交通網、安全性への影響も懸念されています。今後の全国的な被害も想定した早めの対策、特定の業種や地域にとどまらない広い視野からの政策を望みます。

 

参考記事:

6日付 北海道新聞(16版)5面「軽石漂着 鹿児島・沖縄81か所」

17日付 日本経済新聞朝刊(福岡12版)43面「軽石、20日すぎ伊豆諸島へ」

17日付 朝日新聞朝刊(福岡13版)33面「軽石どこまで」

17日付 読売新聞夕刊(福岡4版)9面「漁船の半数 出漁自粛」

24日付 朝日新聞デジタル「軽石、三宅島沖にも 朝日新聞社機で確認」

参考資料:

産業科学総合研究所ホームページ

17日付 毎日新聞「軽石、10港で漁業に支障 ダイビング200人超キャンセルも /沖縄」

NHK「軽石 茨城県や千葉県の海岸などでも少量の漂着 相次ぎ確認」

23日付 琉球新報「伊江島、伊平屋と伊是名も 軽石漂着でフェリー欠航、各地で相次ぐ」