育休制度、注目する男子学生はどのくらい?

大学3年の秋。先日、筆者と同じく報道業界を志望する女子学生と夕飯を食べに行った。あの新聞社は採用人数が少ないとか、このテレビ局の面接は難しいらしいとか、ちょっとした裏話に花が咲いた。行きたい会社にすんなりと就職できることは稀だ。就活生はいつも複数の会社を比較している。「産休・育休は会社選びのときに、どのくらい注目するのか」と聞いてみた。すると「あなたは?」と言わんばかりの厳しい視線が返ってきて、ハッとした。

 

近年、ジェンダーの視点は非常に注目されており、実感することも多い。大晦日の風物詩、NHK紅白歌合戦は今年から司会の色分けをしないことが決定した。

多様な価値観を認め合う意味も含めた今年のテーマ「Colorful~カラフル~」に沿い、司会は昨年までのように紅白と総合に役割を分けず、司会に統一する。(10月30日付、朝日新聞)

さらに、NHKは10月から「テレビ体操」に男性アシスタントを登用した。

五輪を巡っては2月3日、大会開催の上で3つある基本コンセプトの一つ「多様性と調和」を無視した、森喜朗・大会組織委員会長の女性蔑視発言が物議をかもし、当人は辞任に追い込まれた。

森氏の会見での「組織委員会に女性は7人くらいおりますが、みなさん、わきまえておられて」という発言から、ツイッターでは「#わきまえない女」とハッシュタグをつけた抗議の投稿が広がった。海外からも批判が集まった。辞退するボランティアも多いと報道される中、発言から3日後にはボランティア参加者に大会組織委員会から謝罪のメールが届いた。

 

2月6日、五輪ボランティアに大会組織委員会から送信されたメールの一部

 

昭和の時代だったら笑い話にされていたのかもしれないが、今では辞職に追い込まれる大問題である。ジェンダーに対する意識の高まりを実感した。

 

では、新聞社内の男女バランスはどうなのか。望月衣塑子さんの著書「報道現場」の中で、編集幹部の女性比率が極めて低いことが指摘されている。実際に報道各社のインターンシップに参加して、年配の社員のほとんどは男性だという印象を持った。

男子学生は男女平等の労働環境をどれくらい意識して就職活動をしているのだろうか。筆者自身は会社説明会で、育休制度について「実際に利用している社員はどのくらいですか」と質問したのは一回だけだ。その時期が来れば考えるだろうと、軽く見ていた。就職活動をする同学年の男子学生と話をしても、育休制度が話題になることはなかった。仕事と子育ての両立に関して、男子学生が人事部に質問している様子もほとんど見たことがない。

「男は仕事ができればいいじゃないか」と心のどこかで思っていた。そうでなければ、仕事と子育てについて聞きたい質問は沢山あったはずだ。遅ればせながら、やっと気づくことができた。今後の会社説明会では、仕事と子育ての両立ができるのか、しっかりと考えて疑問をぶつけたい。

 

参考記事:

10月30日付 朝日新聞東京朝刊(埼玉14版)37面「NHK紅白歌合戦、司会は色分けせず」

2月10日付 朝日新聞デジタル 「わきまえない女」は止まらない 性別を超えた共感の渦

参考資料:

望月衣塑子 (2021) 『報道現場』角川新書