「死ねカス」「失せろゴミ」 ネットの誹謗中傷減らすには

荒廃したネット空間に朗報です!刑法の「侮辱罪」の厳罰化を検討する法制審議会の部会が、法定刑に懲役刑を追加する法改正の要綱案を取りまとめました。従来の「30日未満の勾留か1万円未満の科料」に「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を加えるとのこと。ネット上の誹謗中傷対策を強化する目的です。

狂気の悪口が飛び交う昨今のSNSの状況を考慮すれば、厳罰化は必然だと思います。女子プロレスラーの木村花さんが、ツイッターで執拗な中傷を受けた末、自殺した事件はまだ記憶に新しい。「性格悪いし、生きてる価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと投稿した人物に対する刑罰は、科料僅か9千円でした。あまりにも軽すぎます。今般の改正案を通じて、誹謗中傷は民事の損害賠償を発生させるだけでなく、社会の秩序を乱しうる重大な刑事罰の対象であると提示したことは高く評価できるでしょう。心理的ダメージを負った被害者に寄り添う法改正だと言えます。

一方で、厳罰化が「抑止力」として機能するかどうかは疑問です。誹謗中傷を書き込む人たちは、周囲が見えていないからです。彼らは大抵、何らかの原因で性根が捻じ曲がっており、友達が少なく、鬱屈した心情を抱えています。リアルで人と交流する代わりに、ネット上でのストレス発散を求めているのです。

仮想空間での出会いをテーマとする最近流行のアニメ『竜とそばかすの姫』でも、心に傷を負った中学生がネット上の仮想空間内で竜として暴力を振るうシーンが描かれています。心が歪んでしまった人たちは、視野が狭く思慮に欠け、法改正の意義や目的、刑事罰の重さなど理解できるわけがないでしょう。なけなしの親友から諫められたり、親に見つかって怒られたりしない限り、人格攻撃している自覚すらありません。

こういう人を生み出さないためには、学校教育や社会における地道な広報啓発活動が欠かせないと思います。ネット上の侮辱は、リアルでの悪口やいじめ以上に攻撃性が増幅されたり、想像以上に多くの人に見られてしまっていたりすることを教えるのが有効です。

筆者は、高校の現代社会の授業で所謂「ハセカラ騒動」が取り上げられたのを覚えています。2ちゃんねるで侮辱や挑発を繰り返していた高校生が、本名や住所などの個人情報を晒しあげられ、フルボッコにされた事件です。先生が、ネット上には絶対悪口を書き込まないよう、そして匿名性を過信しないよう、注意喚起したことを今でも覚えています。

筆者は、当ブログで意見を発信する身。誹謗中傷や名誉毀損にならないよういつも気をつけているつもりですが、引き続き細心の注意を払って記事を綴りたいと思います。

 

参考記事:

26日付 日経新聞朝刊(京都12版)37面「侮辱罪に懲役刑 答申へ」