総裁選で「勝った」もう1人の候補

本日29日、自民党総裁選の投開票が行われた。岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野太郎行政改革相、野田聖子幹事長代行の4氏が立候補。1回目の投票では、いずれも過半数に届かず、決選投票の結果、首位の岸田氏が2位の河野氏を抑えて新総裁に選出された。

岸田氏は1回目の投票では1票差ではあるが河野氏を抜き、決選投票でも90票近くの大差をつけて勝った。下馬評を覆す大勝利であったいえる。しかし、総裁選ではもう1人の「勝者」がいた。それは高市氏だ。

数カ月前まで「次期首相候補」に関する世論調査ではランク外の政治家であった。ところが、総裁選への出馬を表明し、安倍晋三前首相の支援を得ると議員、党員間での支持を急拡大。総裁選で議員票114票、党員票74票を獲得した。議員票では首位の岸田氏に続き、数ヶ月前までは首相候補にさえ数えられなかった政治家としては大健闘したと言える。

高市氏の善戦を読み解くキーワードは、「保守」であろう。高市氏は憲法改正、安全保障の強化、原発推進を主張。首相就任後の靖国神社参拝も明言している。また、選択的夫婦別姓や女系天皇にも反対しており、党内でも生粋の保守派とみなされていた。今回の総裁選では、高市氏以外の候補はリベラル志向が強かった。さらに、同じ保守派の安倍前首相から精力的な支援を得られた。その結果、保守票が高市氏に糾合したといえる。

また、派閥の「締め付け」も緩く、領袖の意向ではなく、自らの思想信条で投票した議員が多かったのではなかろうか。だからこそ、保守派の高市氏に一定以上の議員票が集まったのだろう。

総裁選で高市氏は負けた。しかし、安倍前首相からの「お墨付き」を得て、首相候補として名乗りをあげることに成功した。また、善戦したことにより「初の女性首相候補」に最も近い存在になった。

試合に負けて勝負に勝った高市氏。今回の総裁選では首相への大きな第一歩を踏み出した。高市氏が政権を率いる日は来るのであろうか。

参考記事:

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