進学しない大学にも、入学金?受験のモヤモヤ

今年、私大への入学金納入期限が早すぎるとして、大学生有志がオンライン上で改善を求める署名を呼びかけたことは記憶に新しいところです。集まった署名数は1ヶ月余りで約3万。なぜこのような運動が始まったのか。背景には、重すぎる受験費用の負担があります。今回は、「費用」という面から大学受験のモヤモヤを考えたいと思います。

入学を辞退した大学の入学金が返還されないということに、以前から疑問を持っている方は多かったと思います。特に国立大学を併願する場合、国立大の合格発表日よりも前に私大の納入期限が締め切られるため、不合格の時を考えて振り込まざるを得なかったという人は少なくありません。全国大学生活協同組合連合会の調査によると、入学しない大学に支払った額の平均は28万〜29万円にのぼります。本来なら不必要なのに、これだけの出費があったといえます。この結果、滑り止め校を作らない、イチかバチかの受験に走る可能性もあります。筆者自身も、志望校以外に入学金を振り込む余裕がなかったため、背水の陣で臨みました。

入学金にとどまりません。友人間で話している際にも感じますが、受験料が高額である点も議論の余地があるように感じます。大体の私学で一学部の受験にかかる費用が3万5000円ほど。筆者も当時、ATMの振り込み画面を見ながら、「1校を受ける権利を得るだけでこんな金額がかかるのか」と愕然としました。当初の予定よりも受験先を大幅に減らし、理想とは大きくかけ離れた受験となったのを覚えています。

その最中に感じたことは「大学受験をしてはいけなかったのか」。仮に5校受験したとしたら17万5千円。想像以上の負担に、経済的に余裕がある家庭でないと挑戦してはいけないもののように感じたのです。教育を受けることに、一瞬でも「ハードルが高いな」と感じてしまう社会にはやはり少し苦しさを感じてしまいます。

費用の壁は高くそびえ立ち、大学の進学を諦めた知人もいます。入学金が支払えない。これだけで、あっさりと夢は絶たれます。これが身近にある現実です。

では、なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか。背景には、受験者からの納入金に頼らざるを得ない私学の経営体質があるようです。国からの私学助成といった制度は導入されているものの、年々その額は減らされています。昨今は、助成金が経常費の1割を切り、ピーク時である昭和55年の29.5%と比べてかなりの縮小です。こういった事情が背景にあり、大学側もなかなか受験者の負担に乗り出せないともいえます。実際、日本はOECD加盟国の中で高等教育機関に割く予算の比率が最も低いのです。ほんの少しでもいいから予算額が増えれば、そう思います。

私学の経営体制にまで踏み込んで考えると、一筋縄ではいかない問題ということもわかりました。しかし、実際に自身の体験や友人の経験を踏まえても、入学前にかかる費用は理不尽に思います。学生というのは、親の経済状況に依存します。家庭によって状況は様々ですが、そういった理由で教育の機会が狭まることはあってはなりません。18歳の時の決断は、その後の人生に大きく関わります。そこに、経済的な理由による障壁があってはならないと強く思います。

 

【参考記事】9月26日付 朝日新聞朝刊 13版 6面 大学辞退 入学金返還論じて

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