ご近所も世界もわかる新聞へ

首相は2017年4月1日に消費税率を10%に引き上げる際、何らかの形で軽減税率を導入できるよう、公明党との調整を指示しました。首相が明言したことで、今年末にまとめる来年度税制改正大綱に軽減税率を盛り込む方向で議論が加速しそうです。これに合わせて新聞界では、消費税率を低く抑える軽減税率を新聞に適応するように強く求めています。例えば、読売新聞では9月25日から全4回にわたる連載「軽減税率 欧州の知恵」。そこでEUの取り組みを紹介しています。シリーズの最終回の見出しは「新聞に適用 EU9割超」。このように各紙、軽減税率に関して特集を組んでいます。その中で「新聞にも軽減税率の適応を」と主張しています。

今日から21日まで新聞週間です。週間中には新聞大会も開催されます。新聞普及のキャンペーンのようなものです。これに先立ち、読売新聞では10月11日に特別面を組んでいました。朝日新聞では本日付けの新聞で特集をしています。毎年、著名人が新聞の魅力を伝えつつ、ここでも「新聞にも軽減税率を」とうたっています。

「他国も実施しているから」「著名人が新聞は素晴らしいと言っている」。この一連の主張にはいささか食傷気味です。私は活字が好きです。新聞の軽減税率は重要だと思います。しかし、一般的に食品や服などの日用雑貨の方に必要性を感じます。そもそも新聞は「役に立っているのだから軽減してもいいだろう」と思ってもらえるような紙面でなくてはいけないと思うのです。

ご近所も 世界も見える 紙面から

今年で第68回になる新聞週間代表標語です。

10日から掲載をしている朝日新聞の特集「子どもと貧困」。貧困が子どもに与える影響についてリアルな現実を取材したものです。同紙の天声人語では、特集に対し「殺伐とした貧しさに胸が痛む」と書かれていました。この記事によって心が動かされた、そんな反響がたくさんあった特集だと思います。実際にFacebook上で友人がその記事をシェアしていました。私たちは知らないご近所を記者による現場取材から感じ取ることができます。世界の様子がわかります。新聞の価値は価格だけでは決まりません。今年の標語からわかることがあります。求められるのは、近所も世界もわかる有益な報道なのです。そんな新聞を作って欲しいと願います。

 

参考記事:
15日付 日本経済新聞(東京14版)1面 「軽減税率、簡易税額票 導入軸に」
15日付 朝日新聞(東京14版)1面 天声人語 「殺伐とした子どもの貧困」、19~23面「新聞週間特集」

9月29日付 読売新聞(東京14版) 1面、6面 連載「軽減税率 欧州の知恵4(最終回)」
10月10日付〜 朝日新聞 連載「子どもと貧困」
10月11日 読売新聞(東京14版) 2、10、11面「新聞週間」