私たちZ世代はどのように戦争を知るべきか <平和を考える・後編>

■戦争を考えるきっかけ

筆者は9日、<平和を考える・中編>を執筆した長岡一晟さんと、長崎県長崎市の爆心地公園を訪れた。公園に到着した午前9時半には、既に核兵器廃絶を訴える多くの市民団体が集まっていた。投下時刻の午前11時2分、公園にいる全員が黙祷を捧げた。

 

投下時刻が近づくと、原爆落下中心地碑の前に多くの人が集まった(9日、筆者撮影)

 

コロナの影響もあってか、見かけるのは地元住民と見られる年配の人が多く、学校を代表して献花に来ている中高生を除くと若者の姿はあまりみられない。そんな中、帽子姿にサンダル履きで公園に来ていた飲食店勤めの男性(24)に話を聞いた。

「家で祈るより、公園に来た方がいいかなと思って」

長崎県内の小中高生は、原爆投下日の9日が登校日になるという。爆心地公園からすぐそばで生まれ育ったこの男性も、学校で平和学習をしてきたと話してくれた。社会人になった今、戦争映画を見るときに平和学習のことを思い出すという。戦争を後世に伝えることについて尋ねると、「伝えるか伝えないかは、個人の気持ち次第になってしまうと思う」としながら、「長崎出身の人も、そうでない人も戦争に対する思いを持つことで、受け継ぐことができるのでは」と話していた。

爆心地公園の出口付近に座っていた2人組の女性(ともに25)は、東京と神奈川から観光で訪れていた。原爆資料館の展示物を見て「とてもショックを受けた」という。地元の人と戦争に対する意識の違いを感じる中で、「戦争は起こってほしくないと痛感したが、自分の力ではどうしようもできないとも感じた。それでも、実際に長崎を見たことで戦争に対する自分の意見を持てたし、選挙のときに候補者を考えるきっかけにもなると思う」と話してくれた。「今はコロナの状況下で旅行していたことを投稿しにくいが、収束したらインスタグラムにここで感じたことを投稿したい」そうだ。

 

この日、ツイッターでは長崎新聞の全面広告が話題になった。長崎市や長崎にゆかりのある企業が連名で出した広告である。紙面を埋め尽くす1万4千近い「黒い点」と左側の列の最上部にある2つの「赤い点」。それぞれ「世界に存在する核兵器の数」と「実際に兵器として使われた核兵器」を示している。筆者も、長崎駅のコンビニで新聞を買い、帰りの電車で広告を見て圧倒された。同紙の担当者によると、「分かりやすさを重視した紙面で、立ち止まって考えてもらいたい」との思いで企画され、平和を考えるきっかけを作ることが目的だったという。実際にツイッターでは、「凄いインパクト」「驚いた」といった書き込みや、「核兵器廃絶を求めたい」との返信など、多くの反響が寄せられていた。

 

9日の長崎新聞に掲載された点の紙面(長崎新聞社提供)

 

15日の「終戦の日」を前に、テレビでは戦争に関する多くの番組が放送された。ドキュメンタリー番組だけでなく、戦時中の疾病対策などを紹介するバラエティ番組もあった。新聞も、戦争当時の様子を伝える特集が組まれていた。加えて、私たちZ世代の多くがSNSを利用している。「原爆資料館に行ってきた」という投稿は、身近な友人が体験してきたものとして関心を集めるだろう。また、長崎新聞の広告もリツイートを通して、多くの人の目に触れるようになった。

戦争体験者の高齢化が進み、生きた証言者は年々減ってしまっている。それでも、記録を通して戦争の悲惨さを伝えるメディアの役割は、これから重要なものであり続けるだろう。そして、私たち自身によるSNSでの情報発信も、戦争を考えるきっかけとして影響を与えられるものになってきている。

 

参考記事:

15日付 朝日新聞朝刊23面(埼玉13版)「平和のバトン 次の世代へ」

11日 withnews 「紙面埋める1万4千の点『鳥肌が立った』長崎新聞、8月9日への思い」