企業版ふるさと納税は地方を活性化させられるか

この取り組み本当にうまくいくのでしょうか。

 

地方自治体に寄付すると納税の際に減額控除を受けることができる「ふるさと納税」。寄付の見返りに地元の特産品を送る地方自治体もあり、寄付で得すると積極的に利用する人も多いようです。

 

政府は新たな取り組みとして2016年に「企業版ふるさと納税」の創設を計画しています。

現行の寄付税制から更に優遇策を強め、企業が寄付に取り組みやすい環境を整えます。しかし個人版の「ふるさと納税」と同じようにうまくいくでしょうか。

 

企業にとってのメリットは法人税などの負担が軽くなることですが、寄付そのものの負担は消えません。環境や地域に配慮するCSRへの取り組みのように、事業活動そのものに直接関係するわけではない動きも最近では広がっていますが、企業にとって成長以外の目的に資金を投ずるハードルは決して低くありません。企業が本来の経済活動に必ずしも合致しない「非合理的」な活動を行うには、企業理念を示しなぜこの寄付をするのかを株主らステークホルダーに理解してもらうことが必要不可欠です。ですから、税優遇を多少強化したところで簡単に「企業版ふるさと納税」が利用されるとは到底思えません。

 

一方、地方自治体は寄付を受けるために企業に何らかの見返りを提供しなければなりません。個人版ふるさと納税と同じような物品を送っても仕方がありません。その地域に拠点をもつ企業に利すると思えるような地域活性化の道筋を示さなければなりません。この点が個人と企業のふるさと納税の大きく異なる点であり、政府が制度設計するうえで配慮すべきところであると思います。

 

地方自治体は企業から寄付という名の投資を受けるのだ、という認識を持たなければなりません。寄付を集めるだけでなく、その実行力が試されています。

 

参考記事:9月22日付日本経済新聞朝刊(東京14版) 1面「寄付額の6割 減税で還元」