職域接種と「打たない人」への配慮

今月21日からワクチンの職域接種が本格的に始まる。私の通う大学も71日から学生、教職員など約4万人を対象に開始する予定だ。

 地域の負担が軽減され、接種が進む職域接種に私は賛成だ。感染拡大防止のため、一刻も早く、広範に実施すべきだとさえ思っている。もちろん、私自身も校内での接種が始まれば、いち早く受ける。

私の学友も「感染拡大防止のためにも必要」、「早く打てそうでラッキー」と職域接種に対しては肯定的な意見が多かった。一方で、「打ちたくない人が同調圧力に苦しむのでは」、「打たない人が変に目立ちそう」と危惧する声もあった。

確かに、職域接種は一般の接種と比べて「打たない人」が簡単にわかってしまう。その為、彼らが差別や不当な扱いを受ける危険性は十分にありうる。

 現に日弁連の「人権・差別問題ホットライン」には、「打たない人」への差別などに対する相談が複数報告されている。以下がその一部だ。

 ――准看護学校2年生に対して、数日前に突然言われて1回目の接種をしたが、副反応が出た56名が「2回目の接種を受けたくない」と言ったところ、学校から「実習に行かなくてよいのか。卒業できなくなる」などと言われている(看護学生)

――勤め先から「ワクチンを打たないならば,過去に予防接種などでアナフィラキシーショックが出たことの診断書を出せ。ワクチンを打ってコロナに罹患した場合には7割の給与を補償するが、受けずにコロナに罹患した場合には自己責任」と言われる(看護師)

――職場から「ワクチン接種は義務的」「打ちたくないのであれば、ここでは働けない」、つまり事実上クビと言われている(介護施設職員)

これらの相談は優先的に接種が行われた医療関係者、介護施設関係者から寄せられた。これから広がる職域接種では、同様のトラブルが増える可能性は非常に高いと思われる。

このような事態を懸念して、ソフトバンクは専用予約サイトを立ち上げるという。従業員からの申込制で、「接種自体を希望しない従業員にも配慮した形で進める」(広報担当者)そうだ。

予防接種法第9条では、ワクチンの予防接種は努力義務とされており、コロナワクチンにも同規定が採用されている。つまり、法的には「打たない自由」は保証されているのだ。

それならば、接種を受けた人、受けない人が簡単には分からないシステムを導入する必要がある。そのうえで、打たない人、打ちたくない人へのハラスメントを防止する取り組みが欠かせない。

  

参考記事:

16日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)25面「職場でワクチン接種 考慮することは」

参考資料:

厚労省「職域接種に関するお知らせ」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_shokuiki.html

 日弁連「新型コロナウイルス・ワクチン予防接種に係る人権・差別問題ホットライン(2021年5月14日・15日)実施結果概要」

https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/event/year/2021/210514_covoidvaccine.pdf