在宅の疲れに銭湯はいかが?

最近は銭湯に行くことが一つの楽しみです。スーパー銭湯ではありません。

似ているようですが、両者は大きく異なります。銭湯は公衆浴場法にある「一般公衆浴場」を指します。住民の保健衛生の上から必要な入浴施設として、物価統制令に基づき知事が上限額を設定しています。対して、スーパー銭湯とは保養や休養を目的とした「その他公衆浴場」に分類されることが多く、いわばレジャー施設。利用料の上限はありません。東京都内では一律470円で入れる銭湯に対し、スーパー銭湯だと700円程度するのはそのためです。

ちなみに、福沢諭吉も過去に銭湯を経営していたことがあり、身分関係なく丸裸で入浴する様子から自由平等を説く一節が著書「私権論」の中にあるようです。

銭湯の数は、年々減っています。東京都内だけでも1965年には2600以上あったのが、2019年に520まで減少。筆者の知るところでも、今年3月末で東京都北区の「地蔵湯」が営業を終えました。ちなみに、銭湯の敷地内にとげぬき地蔵の分尊があることが名前の由来です。最終営業日の31日夜に訪れると、「10年以上通ったのよ、ありがとね」と帰り際に番台に声をかけているおばあさんがいたのが印象的でした。

最終営業日の地蔵湯(3月31日、筆者撮影)

14日付の読売新聞夕刊には「ぬるくない銭湯経営」という見出しで、興味を引いた記事がありました。記事の中では、京都府や愛知県で老朽化した6軒の銭湯経営を行う湊三次郎さんが

現実は本当に甘くねえぞって痛感しました。ビジネス目的だけで銭湯をやる人なら、すぐ手を引いているはず

と話していました。今までになかったような独自の取り組みで集客をしなければならない経営の難しさが分かります。実際に湊さんが経営する銭湯でも、朝風呂やイベントの開催などを工夫することで若者が訪れるようになったとのことです。

都内でも、新たな取り組みを行っている銭湯はたくさんありました。北区の「殿上湯」では、バーを併設しています。炭酸水や氷は、お湯と同じ地下水を使っており、こだわりが感じられます。4月には渋谷区の「改良湯」で、飲料メーカーと協力してジュースを提供するイベントが開催されました。

コロナ下の銭湯は敬遠されがちです。でも「黙浴にご協力ください」とのポスターが貼られているように、おしゃべりは厳禁。浴場内は水の音が響くのみです。たまには大きな湯船に、足を伸ばして浸かってみてはいかがでしょうか。在宅続きで溜まったストレスが解消するのは保証します。

銭湯内での会話を控えるよう呼びかけるポスター(東京都浴場組合より)

参考記事:

14日付 読売新聞夕刊(埼玉4版)8面「ぬるくない銭湯経営」

参考資料:

東京都浴場組合 東京都内の銭湯の数の推移