テレビの未来を考える

筆者は大のテレビっ子です。年がら年中テレビをつけたままの家庭で育ったせいか、今やなくてはならない存在になっています。しかし、悲しいことに小学生の頃はテレビドラマの話で友だちと盛り上がったのに、今では通じないことが多くなりました。1950年代、『三種の神器』としてもてはやされ、チャンネル争いで殺人まで勃発させたテレビ。令和の時代にはその存在も変わりつつあります。

テレビは今、危機に瀕しています。10代、20代の半数がほぼ見ていないということが、NHK放送文化研究所が発表した国民生活時間調査で明らかになりました。

グラフは、調査日にテレビを15分以上視聴した場合のみ「見た」として集計をしています。2015年も20年も16歳から19歳のタイミングにかけて視聴者が大きく減少しています。筆者もそうですが、高校に入学をしたタイミングでスマートフォンを手に入れたことが理由にあるかもしれません。

朝日新聞の記事より筆者が作成

ほぼテレビを見ないことが判明した10代から20代はZ世代と呼ばれています。デジタルネイティブであり、SNSネイティブ、さらにスマホネイティブでもあるといった特徴を持ちます。生まれたときから、あるいは物心ついたころから、新たなメディア環境のなかで育ち、生活してきた人々を指す言葉です。

もちろんニュースなどの情報はネットからも入手することができます。Youtubeなどで好きなコンテンツを見ることも可能です。しかし、ネットでは私たちは良くも悪しくも主体的な行動をとります。自ら探すことにより、興味のある内容ばかりを選びだしがちです。

一方のテレビは意識せずともチャンネルを切り替えるたびに多くの情報が目と耳に飛び込んできます。新聞やラジオの若者離れが急激に加速するなか、テレビは情報を満遍なく吸収できる最後の砦なのかもしれません。

そんなことを考えていた折、13日付の読売新聞に興味深い記事を見つけました。

最近では、視聴率が20%を超える番組は年間でも数えるほどで、10%超えで喜ぶ関係者もいる

逆に歴代視聴率はどうなっているのか、ランキングを調べてみました。

「日本と世界の統計データ」より筆者が作成

21世紀になってランクインしているのは「サッカーワールドカップ」の中継のみ。

ダントツ1位は「第14回NHK紅白歌合戦」。翌年には東京オリンピックが控えています。出演歌手は美空ひばりに坂本九。昭和歌謡ファンの私でなくても一度は曲を耳にしたことがあるかと思います。そしてドラマ部門で唯一ランクインを果たした「おしん」。イランでは視聴率90%をたたき出し、放映時間には町から人がいなくなるとさえ言われました。明治から昭和までの激動の時代を背景に、さまざまな苦労をしながら成長していく姿を描いたこのドラマに、自らの半生を重ね合わせた視聴者も少なくありませんでした。

ランキングから、名を残す番組の多くには時代背景や当時の情勢も大きく絡んでいるということが分かります。

では、時代が変わった今、テレビ業界はこのまま諦めモードでいいのでしょうか。視聴者がテレビの前で熱狂したあの時代はもうやってこないのでしょうか。

読売新聞の記事を読み進めると、面白いことが分かりました。それは「個人視聴率」です。

個人視聴率は、測定用リモコンに家族それぞれに割り振られたボタンがあり、視聴した人数や視聴者の性別、年齢、職業など、個人の属性まで把握できる。

視聴率を調査・提供するビデオリサーチ(VR)は97年から関東地区で個人視聴率の調査を始め、昨年3月にようやくほぼ全国で実施することになりました。個人視聴率の情報は番組制作や広告などのターゲティングに反映できるため、影響力はとても大きいといいます。皮肉なことにテレビ離れを加速させた「デジタル化」が今度はテレビを支えている構図です。

最高視聴率30%を超えたテレビドラマ「半沢直樹」を思い出しました。確かに、テレビ離れは進んでいますが、群を抜いて面白い内容であれば、競争相手がどんなに多くとも、注目が集まるのは確かです。個人視聴率を十分に利用した、視聴者が没頭できる番組作りに期待が膨らみます。

 

参考記事:

5月20日 朝日新聞デジタル 『10~20代の約半数、ほぼテレビ見ず「衝撃的データ」』

13日付 読売新聞朝刊 埼玉12版 9面 「個人視聴率 テレビをアツく」

参考資料:

「日本と世界の統計データ」

日本の歴代テレビ視聴率ランキング (toukeidata.com)