マイナンバーカードの普及率、3割どまり  デジタル化は進むのか

 

季節の変わり目だからなのか体調を崩しがちで、病院にお世話になることがありました。診察を終えて処方箋を貰い薬局へ。そこで見たポスターに目が留まりました。マイナンバーカードが保険証代わりとなり、薬剤情報や過去3年間の特定健診の数値などが薬局で把握できるようになるというのです。なんと便利なのだろうと感動しました。通院の度に保険証とおくすり手帳を別々に用意しなくてはいけなかったのがひとつになるのは患者としてはとても楽です。

「私もカード持っているし、いつ使えるように設定しようかな」。薬剤師に呼ばれるまでそんなことを考えながら、周囲の人々を観察していました。しかし、どの人もバックから取り出すのは保険証とおくすり手帳。マイナンバーカードを利用する人は誰一人としていませんでした。この現実と理想の差はどうして生まれたのか。制度の今を知るとともにデジタル化について考えたいと思います。

総務省のホームページによると、マイナンバーカードは2016年1月から本格的な交付が始まりました。制度の目標は「便利な暮らし、より良い社会」の実現。これまで住民票コード、基礎年金番号、健康保険被保険者番号など、いくつもの番号で国民一人ひとりの情報を管理していたのを共通番号にして個人の特定を確実かつ迅速にできるようにしました。最近では俳優の堺雅人さんを起用してその便利さをPRしており、印象に残っている人もいるのではないでしょうか。

しかし普及率は先月時点で3割、都道府県で最も高い宮崎県でも39.9%にとどまっています。最下位の新潟県に至っては23.4%。22年度までに国民に行き渡らせるという政府の目標には遠く及ばないのが現状です。日経の記事では、ITへの意識の違いが普及率の高低となって表面化していると分析しています。

また2020年度に個人番号を含む情報が漏洩するなどのマイナンバー法違反またはその恐れのある事案は、156機関で207件が確認されています。情報が本当に守られているのか疑問も残ります。

9月にはデジタル庁が創設され、今後ますますデジタル化が進んでいくことが考えられます。効率化が進み便利な暮らしが実現されることに期待はしますが、マイナンバー制度の現状を知ると国民の理解が得られるまでに、まだまだ時間がかかるようにも思えます。地方自治体を通じて利用の呼びかけを強めるだけでなく、ITの重要性を知ってもらう努力、情報が洩れない信頼できる手だてもまた必要です。

 

参考記事:

6月11日日本経済新聞デジタル版「情報漏洩など、昨年度207件に マイナンバー巡り

6月4日同上「マイナカードがDXの先兵に 宮崎・都城、給付金1週間で

参考資料:

総務省ホームページ

マイナンバーカード総合サイトホームページ