保釈金制度 日本でも廃止すべきか

全米初の刑事司法改革です。犯罪容疑で逮捕された人が公判までの期間の釈放を求めて支払う「保釈金制度」がイリノイ州で撤廃されました。保証金を払える財力を有するか否かで、制度を利用できるか決まってしまう不平等な制度だと長年批判されていました。他の州でも金額の引き下げや部分廃止が進んでいましたが、全廃が施行されるのはイリノイが初めて。昨年のジョージ・フロイド暴行死事件で注目された、警官が犯罪者の首元を押さえつける動作を禁止することや、警官の行動を録画するカメラの装着義務化などと共に改革法案に盛り込まれ、民主党の知事が署名しました。

保釈金制度とは、一定額の納付と引換えに、容疑者が身柄を釈放してもらう制度です。死刑や無期懲役が科されうるような重大犯罪を犯した場合、口裏合わせや関係者への脅迫の恐れがある場合等を除き、原則、裁判所が認めれば解放されます。保釈期間中に証拠隠滅や逃亡を図るなどしない限り、裁判後は有罪無罪に関わらず、全額返還されると定められています。

米国における保証金の相場は、州や罪状によって異なるものの、10万〜1000万ドルに及ぶことが多々。金持ちは釈放してもらえる一方、支払い能力のない低所得者は勾留され続けるしかないのです。保釈金を貸し出す金融業者は多く存在しますが、高利が付くので、庶民にはなかなか手が出せません。留置場から長期間出られなければ、職や家族を失う恐れが増します。貧富に人種の偏りがある米国では、この制度が構造的な人種差別にもつながっていました。

日本では、保証金の相場は通常200万円前後。(一社)日本保釈支援協会が中心となって、保証金を立て替える仕組みも整えられてきました。米国と比較すれば、不平等の度合いは小さくなっています。人種問題との関係もありません。とはいえ、程度の如何に関わらず、富裕層に有利な制度が厳然とまかり通っていることに変わりないでしょう。

高額な保証金を納めさせることは、逃亡や証拠隠滅の抑止に必ずしもつながりません。IR汚職事件に関わった秋元司衆議院議員は3千万円を払って釈放されながらも、証人の買収を図って、全額没収のうえ再逮捕。カルロス・ゴーン氏も、15億円を納めながら国外に逃亡しました。過度な報酬を懐に収めていたゴーン被告から大金を回収できて良かった、と見る向きもありますが、罰金は制度の趣旨と異なります。身柄の自由を許しつつも裁判に出廷させる、という本来の目的が達成されないのに、貧富で制度利用に差が生じてしまう制度など、百害あって一利なし。日本でも、早々に廃止すべきではないでしょうか。

参考記事:

26日付 日経新聞朝刊(大阪12版)13面「全米初 保釈金を撤廃 イリノイ州「貧富の差」批判巡り」

参考ウェブページ:

Yahoo!ニュース「保釈金は金持ち優遇」米国で制度見直しの動き 猪瀬聖
https://news.yahoo.co.jp/byline/inosehijiri/20200105-00157675/

画像:日経電子版より