海外メディアから見た森発言

東京五輪の開幕まで、5ヶ月を切った。新型コロナウイルスに加え、森喜朗前会長の「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」という女性蔑視の発言を受けて、開催に対する不信感が増幅している。

国内で非難された森発言には、海外メディアからも批判が相次いだ。ここでは、アメリカ、イギリス、フランスのメディアがどのように反応したのかを取り上げたい。

まず米NYタイムズは、「組織委員会はコスト上昇や国民の反対といった問題に直面しているのに、会長の『女性の話が長い』発言で新たな怒りをうんだ」と紹介。AP通信は「女性が政治や役員室のなかで著しく過小評価されている日本でこの発言は物議をかもしている」としたうえで、「森氏が船長を務める東京五輪は問題だらけの沈みつつある船だ」と揶揄した。

次に英BBCは、「東京五輪のトップが性差別騒動で謝罪」という見出しで、「会見で女性の話が長いという根拠を問われると、『最近は女性と長くしゃべっていないからわからない』と答えていた」と報じた。そのうえで、わざわざ「東京オリパラ組織委員会は、新型コロナの影響で1年延期となった大会の確実な実施を任務としている」との注釈をつけている。

そして仏AFP通信は、「日本はさまざまな国際的指標で上位にランクインしているが、各国の男女格差を示す世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では153カ国中121位と、ジェンダー平等の推進にはまだまだ遅れている」と日本の現況を指摘。同じくフランスの無料日刊紙20 minutesは、「お疲れの様子:日本の森元首相、性差別の高速道路を時速320キロで突っ走り、取り締まりにあう」という見出しでその現状を皮肉った。

このような海外の反応を見てみると、森氏の発言そのものだけでなく、その場で誰一人たしなめなかった評議委員の面々をも批判しているように感じた。それに比べて国内のニュースを見ていると、森発言そのものに対する批判だけが先走りしているように感じてしまう。もちろん発言自体も問題だが、それを許してきたこれまでの日本社会に、世界はより落胆しているのだろう。

スポーツは、国同士が武力を用いずに競い合うきわめて重要な手段である。その舞台となる五輪は、開催国だけでなく地球規模での納得感がなければ成り立たないだろう。組織委員会の新しい会長に橋本聖子氏が就任してから1週間。コロナ禍で未だ開催自体が危ぶまれる中、森前会長の発言が生み出した不信感を払拭するというマイナスからのスタートとも言えるが、残り5ヶ月をかけて東京開催への国際社会からの信頼を取り戻してほしい。

参考記事:

26日付 読売新聞朝刊(東京12版)11面 「論点スペシャル 五輪パラ 橋本新会長に提言」