睡眠導入剤混入問題 安全第一の薬作りを

ごめんなさい。診断を間違えました。

大学3年生の秋。生まれて初めて誤診をされました。

朝から軽い倦怠感を覚えながらも、インターンに向かったある日。帰路につく頃には、歩くことも辛いほど体調が悪化していました。診療所の待合室で熱を測ると38.5度。きっと疲れが出てしまったんだ。そう思いながら診察を待ちました。

診断は、「おなかの風邪」。腹痛はないと訴えたのですが、それでも診断は変わりません。どこか釈然としない気持ちを抱えたまま、処方された薬を飲んで眠りにつきました。

2日後。なかなか体調は良くなりません。流石におかしいと思い、再度受診。そこで上記の言葉を言われました。本当の診断は、喉の風邪。喉は腫れ、点滴をしなければいけないほど悪化していました。結局、全快するまでに1週間かかりました。

風邪は風邪でも、喉とお腹の風邪では処方される薬はもちろん違います。身体の不調を改善する薬は、治せる場所とケアしなければならない場所が合致して初めて効力を発揮します。医師が誤診をしては、いくら「薬」を飲んでも治りません。しかし、正しい診断を受けても、その「薬」に異常があったら…。考えるだけでもぞっとする事態が判明しました。116日間の業務停止命令を受けるきっかけとなった小林化工の睡眠導入剤混入問題です。

法令やルールより作業効率を優先してしまった。

あまりにも無責任な小林広幸社長の発言には呆れるほかありませんでした。生産スピードを重視し、「薬」を供給しても、不良品であれば意味がありません。急成長した影響で、知識、技術が追い付かなかったとの社員の声もありますが、生産する数を見るのではなく、製品の先にいる多くの患者の存在にまず目を向けるべきでした。安全軽視の会社の姿勢で、2人が死亡、200人以上が健康被害を訴えています。同社は、この事態を重く受け止め、反省しなければなりません。

後発薬を扱う同社が起こした今回の問題。ジェネリック医薬品に不安を覚える人も出てきています。新薬よりも安価なジェネリック医薬品の普及は、医療費の財政負担を減らすため、安全性や有効性を訴え、国を挙げ取り組まれてきました。近年は希望する患者も増えてきた矢先の「睡眠導入剤混入問題」。医薬品への信頼も、同社はいとも簡単に壊しました。同社の製品のみならず、後発薬の信頼を回復するためにも、患者第一の安全な薬作りを求めます。

参考記事

10日付 読売新聞朝刊(東京13版)3面「[スキャナー]成長の陰 違法常態化 小林化工 業務停止」