政府は選挙の投票率向上に向け、有権者が投票しやすい環境を整えようとしています。秋の臨時国会への提出が予定される公職選挙法改正案では、これまで認めていなかった投票所への子どもの同伴を全面的に解禁することなどが盛り込まれています。選挙権年齢が18歳以上に下がる来年夏の参院選からの導入を目指します。これまで障害になっていたことを制度面で改善することは評価できます。でもこれで若者の投票率向上は望めないと思います。投票のやり方を工夫しても関心がなければ投票所に足を運ばないからです。
若者の投票率を高めるためにはどのような工夫が必要でしょうか。私たちは政治を身近なものとして捉える機会が少ないのです。現実には少なからず自分たちの生活に政治が関わっているのですが、残念ながらそれに気がつきません。今年、18歳になる妹は「私はどんな視点で候補者をみればいいのかわからない」とつぶやきます。私も含め、自分のものさしがないので選挙のときに困ってしまいます。
高校生なりの政治家の選び方があるはずです。自転車に乗る機会が多いでしょう。今の道路交通法が自転車ユーザーに厳しすぎるのではないか。そう感じたなら、道交法に関する各候補者の意見を調べてみればいいのです。候補者選びを自分の生活に照らし合わせて考えてはどうでしょうか。そのためには自分の生活にどのように政治が関連しているのか考える教育が重要です。論争的な問題も含め、多様な見方を紹介し、考える材料を提供することが大事でしょう。
実践的な授業の一環として、高校生を対象にした体験学習の仕組みがあってもいいのではないでしょうか。すでにある「議員インターンシップ」を知っていますか。大学生が夏休みや春休みの2ヶ月間、議員と行動を共にすることで、議員の仕事や思い、政治と社会のつながりを知るインターンシップです。いくつかのNPO法人が主催しています。そのうちの一つにNPO法人ドットジェイピーがあります。私の友人も昨年の春休みに参加しました。体育会テニス部で忙しい友人。しかしテニスだけで終わる大学生活にはしたくないと思い、参加したそうです。彼女は、都内の世田谷区議会議員にお世話になりました。地方議会をみることで議員を身近に感じ、政治に関心が高まったそうです。高校生の時から参加する機会があれば政治に対してのイメージが変わるだろうと語ります。
17歳の高校生が18歳の同級生に同調して選挙運動をすると公選法に抵触する恐れがあります。選挙運動できる人とそうではない人が混在するクラスで実現するには厳しいかもしれませんが、参考にすることはできると思います。
私の高校生活を振り返ると、政治経済の授業は受験勉強のためとしか捉えていませんでした。政治が身近だとも感じませんでした。みなさんはどんな授業を受けていましたか。どんな授業がいいと思いますか。
参考記事:
7月21日付 日本経済新聞朝刊(14版)2面、「投票 子連れOK」
7月21日付 読売新聞朝刊(14版)3面、社説「政治的中立をどう確保するか」