東芝、不適切会計問題

 日本を代表する名門会社で、学生の就職人気企業でもある東芝が大きく揺れています。21日には不適切な会計問題を受けて、田中久雄社長をはじめとする歴代3社長が責任を取って辞任しました。また、副社長4人らも辞め、取締役の半数が退陣という異例の事態に陥っています。会計操作への関与が認められなかった室町正志会長が暫定的に社長を兼務し、8月中旬に新経営陣が発表されるといいますが、どうなることでしょうか。

 外部の第三者委員会による調査から、2008年8月から2014年12月までにわたって利益の水増しを続けていたことが発覚しました。そして、第三委は経営トップの過大な目標の達成への要求が不正に繋がったことを指摘しました。過去には、「チャレンジ」と称し各事業部門に対し3日間で120億円の収益改善を迫ったこともあるそうです。

 経営トップの関与と上司の意向に逆らえない企業風土。それにより内部のブレーキが働かず、組織的なごまかしや不正操作が暴走したというのです。外部の新日本監査法人も見抜くことができず、社会や証券市場に対する不正が繰り返されてしまいました。

 その反省から、今後は取締役の過半数を社外から招くなどによって内部統制の強化を進めていくそうですが、東芝でこのような不正が行われていたというのは驚きです。東芝は上場企業のなかで最も早く社会取締役が中心の委員会を設置し、周りの規範でした。日本の企業社会ではこんな会計不正は付き物と思われないか心配でもあります。

 経営陣、企業風土を刷新したとしても、失われた信頼を取り戻すことは容易ではありません。加えて、株主が株価下落による訴訟を起こす可能性も否定できません。

 今回の問題により日本企業の透明性や健全性を高める「コーポレートガバナンス」が本当に機能しているのかという懸念が広がりました。日本の発展のためにも、今後このような不正を繰り返してはなりません。

 たとえ上司が不正への荷担を強要しても、しっかりと抗えるような内部通報制度。不正に屈しない人を正しく評価できるような人事制度。いますべきことはいくつも思い浮かびます。そして、企業にとっての最大の責務は、法令遵守であることを再認識しなければなりません。

参考記事:7月22日付朝日新聞朝刊(東京14版)1面「取締役の半数が退く」
     7月22日付朝日新聞朝刊(東京14版)2面(総合面2)「利益水増し経緯語らず」
     7月22日付読売新聞朝刊(東京14版)1面「東芝歴代3社長辞任」
     7月22日付読売新聞朝刊(東京14版)2面(総合面)「3日で利益120億迫る」
     7月22日付読売新聞朝刊(東京14版)3面(総合面)「内部統制 機能せず」
     7月22日付日本経済新聞朝刊(東京14版)1面「東芝、来月に新経営陣」