プラカードを掲げて「強行採決反対!」、「やめてください議長!」と叫ぶ野党議員たち。一部分がぽっかりと空席になった本会議場で可決される法案。その足で首相官邸前のデモに参加する野党議員たち。それを囲んで熱狂するデモ参加者。何かがおかしいと思いませんか。
一昨日の衆院特別委員会を半ば怒号が飛ぶ中で通過した安保関連11法案は、昨日の衆議院本会議を賛成多数で通過しました。論戦は参議院に移り、今月中にも本格化する見通しです。昨日の本会議では、採決前に民主、共産、社民が退席、維新は自らの対案が否決された後に退席、生活は本会議自体欠席。このような国会は異常としか言いようがありませんし、私は今挙げた野党5党に強い憤りを感じています。
国会はそもそも、国民から選ばれた代表が一堂に会し、日本のために「議論」を尽くす場所です。異なる主張を持つ議員が数多く集まる中でも、どこかで接点を見出し、合意形成をすることが求められる場です。プラカードを掲げてシュプレヒコールを挙げる場所でもなければ、自分の言い分が通らないからといって欠席していい場所ではありません。法案に反対ならば、きちんと胸を張り反対の意を示して着席していて欲しかった。それをして初めて野党が務まるのではないでしょうか。
昨年の衆院選で野党を選んだ有権者には、違和感を持っている方も多いはずです。極端な書き方をしますが、野党陣営は昨年の衆院選の結果を受けて、このような状態になることは予測できたはずです。にもかかわらず、なぜ真正面からのぶつかり合いばかり議場で演じたのでしょうか。もし私が野党議員なら、安保法案に疑念を持っている与党内の議員を見つけて協力や造反を促してみたり、与党案に近いながらも、ここだけは譲れないという箇所を徹底して法案に入れ込むことに全力をあげて討論したりするなど、様々な方法で野党議員の務めを全うします。野党議員に期待されることは、与党の監視と軌道修正です。与党との単純な対決ではありません。
今回の法案審議で、賛成派、反対派の市民団体はともに主張を激しくしています。これを受けて、国会も熱狂してはなりません。市民の声を真摯に受けとめた状態で、あくまで冷静に議論し互いの妥協点を探ってほしいと思います。残された冷静な議論のチャンスは限られています。今後行われる参議院での議論では、与野党がともに冷静に意見を戦わせてほしい。そう切に願っています。
参考記事:17日付讀賣新聞朝刊(東京13版)1面『安保法案衆院通過』
同朝日新聞朝刊(東京13版)1面『安保論戦参院へ』
同日本経済新聞朝刊(東京13版)1面『安保法案衆院通過』