なぜ「和田誠」にハマっているのか

週刊文春の表紙、星新一の本の装丁と言えば、イメージが付くでしょうか。それらに描かれた絵の作者が和田誠さんでした。昨年10月、人々から愛されたイラストレーターは残念ながらこの世を去ってしまいました。現在、和田さんの作品を展示しているところがあります。渋谷のパルコ8階です。24日に、そして今日も訪れました。なぜ和田さんに魅了されているのか、その訳をお話しします。

そもそも私が、和田誠さんを知ったのは、大学生になる少し前と言っていいでしょう。きっかけは、妻である料理愛好家平野レミさんのレシピで料理を作ったこと。その折に偶然、和田さんのことを知りました。調べてみると、彼の作品を今までたくさん目にしていました。一番好きだった絵本『これはのみのぴこ』の挿絵も、小学校のときに読んでいた星新一さんのショートショートシリーズの表紙絵も。シンプルで、温かみのあるイラスト。図書館で毎日のように見かけていたので、懐かしいと思いました。

昨年訃報を聞いたときには、とても悲しい気持ちになりました。あっという間に1年経ち、今月のはじめ、期間限定で東京・幡ヶ谷にオープンしていた「和田誠書店」に訪れました。今まであまり知らなかった和田さんの私生活が描かれているエッセイなど、気に入った本を3冊購入しました。渋谷のパルコで開催されている「和田誠さんと。」という展示にも足を運びました。

何でイラストに惹かれているのか。なぜ郷愁を感じるのか。私が和田さんに魅了されるのかを知ろうと、展示に来ていた人に話を聞いてみることにしました。

37歳の会社員女性は、三谷幸喜さんが好きで、朝日新聞に連載されている『三谷幸喜のありふれた生活』の題字やイラストで身近に感じていたそうです。「でも、人となりは知らなかったので、今回の展示で知ることができた」と嬉しそうに話していました。

20歳の男子学生が和田誠さんの作品を認識したのは中学生のとき。小学生のときに読んでいた星新一のショートショートの表紙絵が和田さんだと気が付き、本の中身よりも印象に残っています。タッチが好き、と話してくれました。

78歳の男性は、多摩美術大学卒で、和田さんの後輩。すでに和田さんは卒業していたが、憧れの存在だったと言います。今は趣味で、和田さんのイラストを真似ているそうです。

みんな話が弾みます。75歳の女性は、レミさんと真逆の性格も含めて、人となりが好き。色合いも絶妙。柔和なイラストに見えるが、よく見ると風刺的な部分もあって面白い。「なんだか、味があるよね」と語りかけてくれました。

一人ひとりの人生の中に、和田さんがすっと入り込んでいます。だから、知らず知らずのうちに、好きになっているのかもしれません。

平野レミさんのティーポットコレクションを描いた「紅茶天国」(2005年3月31日号)、ほぼ日曜日のホームページのスクリーンショット

会場には、週刊文春で使われた2000点の中から厳選した30点以上の原画が展示されていました。私が印象に残っているのは、ティーポットが10個ほど描かれている作品です。妻のレミさんの集めていたものだそうです。絵を通して奥さんへの思いを感じることができました。そんな和田さんの人となりも魅力の一つだと思います。

私自身、一部の作品しか知らないのに、どっぷりと和田さんにハマっています。もっと作品を知りたい。装丁を担当をしたのは700以上あるとか。あなたの人生にもきっと潤いを与えてくれているはずです。

参考記事:

6日付読売新聞夕刊8面「和田さん 次代への600冊 あすか『書店』 60年代作品や非売品も」

 

参考文献:

ほぼ日曜日 和田誠さんと。https://www.1101.com/hobonichiyobi/exhibition/2945.html

平野レミさんと、和田誠さんのことを話そう。https://www.1101.com/talk_about_mrwada/2020-09-07.html