筋トレに励む大学生、その目的とは

ある日、サークルの先輩に会うとムキムキになっていた。半年ぶりとはいえ、腕も胸板も随分厚くなっていた。「週3日、学校へ通うついでにジムで鍛えているよ」と話す。大学付近にジムがあるため、同年代の利用客が多いそうだ。

知り合いの中に、フィットネスクラブやスポーツジムで筋トレする人が多い。授業の空きコマ、バイトまでの時間、人によっては休日もみっちり鍛えるそうだ。しかし、月間利用回数や時間制限なしのコースの月謝平均はおよそ1万円。大学生にとっては大金だが、なぜそこまでして体を鍛えるのだろうか。

筋トレ好きの友人にインタビューしてみた。彼はゲームやアニメの影響もあり、ボクシングジムに通っていた。出会った頃は少しぽっちゃり体型だったが、1年後には筋肉質でガッチリとした体になっていた。「自分を変える」一心で15キロのダイエットに成功し、その後も何か月か続けていた。

「理想の体型を目指すというより、日々、自分の体が変化していくのが楽しい。その変化は目に見えるし、前に進んでいるという自己肯定感が得られる」

ネットリサーチ「DIMSDRIVE(ディムスドライブ)」の「『スポーツクラブ・フィットネスクラブ』に関するアンケート」(2012年実施)に、年代別の「通う理由」が棒グラフで示されている。

20代を見ると、同率1位で「健康の維持・回復のため」「運動不足の解消のため」が並ぶ。どの年代も「健康志向」が強い傾向にある。しかし、本当はどうなのだろう。さきほどの友人から筋トレに励む人(主に大学生を含む20代)の目的を、ジムでの経験を踏まえて教えてもらった。①モテるため、②趣味が無いので何となく、③背が低いなどのコンプレックスを克服するための3点が大多数だと言いきる。

彼の話を聞いて、若い年代で筋トレが流行っている根本の理由は「自己肯定感が得られるから」のような気がする。健康維持、運動不足の解消は体に変化をもたらす。その変化が楽しく、進化している実感が自信に変わるというのだ。実際、就職活動で「学生時代に力を注いだこと」に、「筋トレをしてダイエットに成功したこと」を書く人もいた。

大学生でも約1万円を払って通う理由が分かった気がする。服やアクセサリーといった表面的なものでなく、「自信」という根本的なものを得ようとしているのであれば、腑に落ちる話だ。

参考記事:

8日付 日本経済新聞朝刊(大阪12版)34面(社会)「筋トレ ビジネスに通ず」