昨晩、近所のスーパーで、高校野球の選手を見かけました。黒々と日焼けした精悍な顔立ち。筋肉質な逞しい体つきに、坊主刈りの頭。見慣れぬ若者たちが店内を歩いていたので、ひと目見て、甲子園の交流試合に出場した選手だと分かりました。何を購入しようか迷いながらも、思い思いにジュースやお菓子を選んで買い、店の隣のビジネスホテルに引き上げて行きました。
夏の全国高校野球選手権大会こそ中止になったものの、甲子園でプレーする機会が設けられ、宿泊も出来て良かっただろうな、と思いました。何より、楽しそうにワイワイと買い物する様子を見て、ほっこりしました。地方で野球一筋の厳しい寮生活を送っていた球児たちにとっては、都会の大きなスーパーを歩き回るだけでも、貴重なひとときになったのかもしれません。
他方、コロナ禍の影響で楽しみを全て失った中高生も多くいます。高校野球こそ、各都道府県で独自の大会を開催することになったものの、他の部活動では公式戦の代わりとなる競技会すら実施されなかったものもあります。修学旅行も大半の学校で取りやめになりました。大切な行事が失われた生徒たちの無念は計り知れません。
昨日の読売新聞朝刊には、オンライン修学旅行の様子が紹介されていました。甲府市の中学校は京都と奈良に行く計画を断念した代わりに、観光地の動画配信を京都の旅行会社に頼んだそうです。喋りのうまいバスガイドさんが、京都の寺社や旧跡を紹介してくれるなら、大いに勉強になるでしょう。甲府市立西中学校の教頭も「コロナ禍で苦しい中、協力してくれてありがたい。生徒たちも喜んでくれるはず」と語っています。
ただ、動画配信を通じて、京都の歴史について学習することが出来ても、生徒の思い出には残りません。思い出を作るためには、甲子園の選手たちのように「宿泊」が欠かせないと思います。友人と部屋に集い、ジュースやお菓子をシェアしながらトランプをする。深夜テンションの勢いで、恋バナをして予想外の告白に盛り上がる。眠気に耐えつつ、先生にバレずに徹夜できるか競い合う。そういう体験こそが青春時代の貴重な思い出となり、子供の情操を育むものです。
もう既に8月。3年生は入試が近づいているので、宿泊行事を今から企画するのは難しいかもしれません。それでも、もし生徒が希望していれば実施して欲しい。学校の近場でも構いません。1泊、2泊でもいいのです。お泊まりの楽しさを、今年の中高生にも味わって欲しいと切に願っています。
全国の中学校高等学校の先生方、ご検討の程、何卒宜しくお願い申し上げます。
参考記事:
13日付 読売新聞朝刊(大阪13版)6面「修学旅行 動画で体験」